目次
1on1やキャリア面談を導入しているものの、「本音が引き出せない」「行動変容につながらない」といった現状はありませんか。一方で、管理職層の多くは体系的なキャリア教育を受けてこなかった背景もあり、外的キャリアを優先しがちで、内発的動機づけへのアプローチに戸惑いを抱えているのが実情です。価値観は多様化し、帰属意識も変化する中で、従来型のマネジメントだけでは人材育成が難しくなっています。
企業に今求められているのは、社員一人ひとりが“自らキャリアを描き、主体的に行動する状態”をどうつくるかという視点です。
その具体策として注目されているのが「キャリアオーナーシップ研修」です。管理職自身がキャリアの軸に気づき、部下との面談を行動を生み出す対話の場へと進化させる具体的手法をご紹介します。
講師は、脳科学とアドラー心理学を融合した「行動イノベーション」を開発し、1万5,000人以上を支援してきた目標実現の専門家・大平信孝氏。1on1の形骸化や主体性醸成に課題を抱える企業の人事・人材開発担当者様にとって、実践的なヒントとしていただける内容です。
パート1:キャリアの軸を固め、部下の成長支援へつなげる「キャリアオーナーシップ研修」(大平信孝氏による講義)
1. キャリア自律が求められる社会背景と企業課題
現在のVUCAと呼ばれる変化が激しく、正解がない時代の中で、一人ひとりの価値観や内発的なモチベーションで行動するということをベースにしたマネジメントが求められているように感じます。また、1on1も導入したものの、その後の行動につながらない、という現状も聞かれます。
その現状を受けて、内発的なモチベーションをいかに引き出していけばよいのか、また、主体的なマインドを持って自分のキャリアを自分自身で作っていく流れを作りたい、といったご相談から研修のご依頼を受けることが多くなっています。その理由として、以下の背景が挙げられます。
- 価値観の多様化
- 従来のマネジメント手法の限界
- 情報過多
- 帰属意識の変化
- 人材不足
そのような背景の中で、継続的に働いてくれているメンバーに、「さらに力をつけて活躍してもらいたい」「自主的に変化し成長してもらいたい」というご要望から、このキャリアオーナーシップ研修のご依頼が増えています。
2. キャリアオーナーシップ研修の概要
キャリアオーナーシップ研修は、キャリアというのを会社任せにするのではなく、自分事として強みや価値観、将来の方向性を明らかにして、その中で今の仕事にどう向き合っていけばよいのかを考え直す研修です。従来の管理職の方ですと、会社という円の中に自分を入れて、どう適応していくかに終始しがちだったかと思います。本研修では、まず自分の価値観やキャリアの軸に気づき、所属する組織の目標との重なりを見つけてどのように働いていくかを考えていきます。
受講された管理職の方からは、これまで自分のキャリアについて考える余裕がなかったが、自分自身の円の中に会社を入れて、キャリア形成を考えることはマインドシフトになったというお声をいただきます。

3. 脳科学で解き明かす2つの行動原理
人が行動する理由は、大きく分けると2つしかありません。
1. 不快回避(痛みを避ける): 「締め切りがあるから」「怒られたくないから」「恥をかきたくないから」といった理由で動く状態です。それなりに仕事は進められ、リスクを避けるので大きな失敗は避けられます。しかし、これには大きなデメリットがあります。やりがいよりもストレスを感じやすく、心身ともに疲弊し、結果として「指示待ち」の状態を生んでしまうのです。
2. 快追求(心地よさを求める): 「達成感を味わいたい」「充実感を得たい」「喜んでもらいたい」という理由で動く状態です。ハイパフォーマーはこの「快追求」のスイッチで動いており、仕事に没頭し、創造性を発揮します。何より、この原理で動いている人は疲弊しません。
おすすめしたいのは快追求を少しずつ増やしていくということです。脳のメカニズムでは、脳は変化を嫌うと言われていますので、快・不快が、5:5なら、6:4に快が増える状況を目指していきましょう、とお伝えしています。
快追求の行動原理をマスターするには、ゴール設定が重要になります。一人ひとりが価値観も強みも異なる中で、自分にとって何が大事なのか、なぜ私が今この会社でこの業務をするのか、を明確にしていきます。この個人的な意味付けができると、快追求のスイッチで仕事をしていけるようになります。
また、価値観は、判断、決断、行動の基準になるものです。明確になるほど、決断力や判断力が上がり、行動力も上がっていきます。同時に仕事に対して、前向きに取り組み、挑戦していけるようになります。
4. 「会社への適応」から「価値観の統合」へ。主体性を育む「共有ゾーン」とは
前述のとおり、自分自身の価値観が分かるほど、自分自身が今この会社でこの業務をすることの意味付けがしやすくなります。逆に言うと、この価値観が不明確で自分のことが分かっていない状況だと、なぜ今この仕事をするのか、説明がつきにくくなります。そのためやりがいを感じられず、いやいや仕事を最低限やることにもなりかねません。
従来の考え方は、「会社という大きな円の中に、自分をどう当てはめるか」という適応の論理でした。しかし、真のキャリアオーナーシップとは、「自分という円の中に、会社を入れる」というパラダイムシフトです。「自分が人生で大事にしている価値観」を明確にし、そのままの形で仕事で実現するのではなく、その価値観と「会社の目標」が重なる部分、すなわち「共有ゾーン」を見つけ出すことが重要です。
その共有ゾーンを見つけるメソッドとして、アドラー心理学が活用できます。
5. 未来を動かす「目的論」の問いかけ
私は脳科学とアドラー心理学を組み合わせた「行動イノベーション」を開発し、研修やコーチングで企業や個人の方をサポートしてきました。本研修でも、アドラー心理学の目的論的アプローチをフル活用しています。
過去、現在、未来というタイムラインがあったときに、現在に何か問題が発生した際、三大心理学者のうちのユングとフロイトは過去に原因があり、それが影響しているという「原因論」のアプローチをかけていきます。
それに対して、アドラー心理学の「目的論」は未来を向いています。現在から今あるものを生かして何ができるだろうか?という前向きな発想をとります。目的論的なアプローチで言いますと、「本当はどうしたいのか?」「どうすれば実現できるのか?」という目的地に向けた問いかけを重視します。この「目的地」に意識を向ける対話こそが、社員の行動スイッチを入れ、自発的なアクションプランを引き出す鍵となります。

パート2:質疑応答(Q&Aセッション)
講師:大平 信孝氏
ファシリテーター:株式会社かんき出版 HRソリューション事業部 山縣道夫
山縣― 「キャリアオーナーシップ」が成果や変化につながった具体例を教えていただけますか?
大平氏― マネージャー層の方にこのキャリアオーナーシップ研修を受けていただくと、まずはマネージャーご自身が自分のことについて深く掘り下げる機会になり、自分自身のキャリアを非常に明確に描けるようになりました、というご感想をいただきます。
また、最も多い声は、マネージャーの皆さんから「面談が劇的に楽になった、価値を生む時間になった」というものです。今までは、表面的な対話になっていた1on1が、研修後は、アクションが引き出せるようになった、成果報告が増えるようになった、との声をいただき、うれしく思っています。
山縣― 「面談から行動が変わり、成果になる」というのは理想的ですね。
山縣― キャリア面談のロールプレイをすると、どのような効果が得られますか?
大平氏― 一定の成果を出している方にはさらに活躍できるよう後押しする面談ができるようになる、というのがロールプレイの大きなポイントです。また、部下が語ってくれないなど対処が難しいケースにも、コーチングスキルを活用することで、徐々に話してくれるようになる関わり方を学ぶことができます。
私がお伝えしているスキルの一つに、「プラスワン」という概念があります。相手の元気さを0〜10の数値で見積もるのです。相手が「4」くらいの低エネルギーであれば、こちらは「5」くらいのテンション、相手が「8」なら、こちらは「9」、と相手よりほんの1ポイントだけ高いエネルギーで接していきます。そうすることで、相手を自然と引き上げ、話しやすい場を創り出すことができます。こうした小さなポイントを組み合わせることで、十分効果を出すことが可能です。
山縣―コーチングスキルの育成についても詳しく教えてください。
大平氏― 私はこれまで数百名のプロコーチを育成してきましたが、そこでは、相手の潜在的ニーズを引き出す力を育成します。同様に研修でも、相手の潜在的なニーズ、つまり「言葉の裏側にある本音」を引き出す問いかけの手順などもお伝えします。
このスキルを習得すると、日常業務やクライアントとの関係性向上や、日常のチームコミュニケーション、さらにはプライベートまで活かすことでできるようになります。聞く力が高まることで、仕事と人生の充実度が上がったというお声もいただいています。
山縣― ありがとうございます。「聞く力」が高まることは、組織の文化そのものを変える起点になりますね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
まとめ:全社的なキャリア自律の推進へ
社員が自らキャリアを切り拓き、組織の目標と個人の喜びを統合させていく。この「キャリアオーナーシップ」の確立は、人材不足や価値観の多様化進む今、企業が避けて通れない経営テーマです。主体性を一人ひとりに期待するのではなく、管理職を起点に“仕組みとして設計する”ことが、これからの人材戦略には求められています。
本研修は、部下のキャリア形成を支援する管理職向けのプログラムだけでなく、若手社員向け、次世代リーダー向け、次期役員候補・中堅社員向けまで、階層別に展開可能です。全社的なキャリア自律推進施策として設計することも可能です。また、貴社の課題に即したカスタマイズ設計や事例のご紹介も承っております。まずは、貴社の現状の課題についてお気軽にご相談ください。最適な導入設計と実施プランをご提案いたします。
参加者の声
- 仕事への姿勢やマイナス思考からプラス思考への転換する考え方が印象に残った。
- 「今あるものを活かして、何ができるか」という問いは、社員への問いかけとして重要だと感じた。
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