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「前任者からの引き継ぎが少なく、何から手をつければよいかわからない」
「来年度の育成施策を上司に説明しなければならないのに、計画の作り方がわからない」
そのようなお悩みを抱えて、この記事にたどり着いた人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
人材育成計画は、一度作れば現場が動くものではありません。しかし、正しいステップを踏んで設計すれば、経営層を納得させる説得力を持ち、現場の育成活動を確実に前進させるロードマップになります。
本記事では、年間960件以上の研修実績を持つかんき出版の社員研修が、初めて人材育成を担当する人事担当者の方に向けて、計画の基本的な考え方から具体的な作り方、押さえておくべき注意点まで、わかりやすく解説します。
人材育成計画とは
人材育成計画とは、「どのような人材を」「いつまでに」「どのように育てるか」を体系的に定めた、中長期的なロードマップのことです。
研修の日程を並べた「年間研修スケジュール表」とは異なり、経営戦略と連動しながら、従業員が習得すべきスキルやキャリアの方向性を明確にするための戦略的な指針といえます。
また、組織全体の育成方針を示す「組織レベルの育成計画」と、個人に紐づく「育成計画書(個人別の目標・施策を記載したもの)」は別物です。前者は全社的な方針や施策の優先順位を整理するもの、後者は個々の従業員に「何をいつまでに身につけるか」を示すものです。両者をセットで設計することが、実効性のある育成体制を整えるうえで重要なポイントです。
人材育成計画が必要な理由
「現場に任せておけばOJTで育つ」という考え方は、かつては一定機能していたかもしれません。しかし、場当たり的な指導や現場任せのOJTだけでは、変化の激しい環境に対応できる人材を、組織として効率的・一貫して育成することは難しくなっています。
背景には、DXの進展・グローバル化・少子高齢化による労働力不足など、企業を取り巻く外部環境の急速な変化があります。こうした状況において、経営目標と育成施策を連動させた計画を持つことの重要性はますます高まっているといえるでしょう。
戦略的な人材育成計画があることで、育成の方向性が組織全体で揃い、人事・現場・経営の三者が同じ目線で動けるようになります。また、来年度の施策を上司・経営層に説明する場面でも、「なぜこの研修が必要か」「どの人材課題に対応するものか」を論理的に示せるため、承認を得やすくなるという実務上のメリットもあります。
人材育成計画に盛り込む項目
人材育成計画書を作成するにあたって、「何を書けばよいか」がわからず手が止まる方は少なくありません。人事部門が設計する育成計画は、個人別の計画書ではなく、全社・階層別・職種別・テーマ別といった組織単位で構成されるのが一般的です。計画書には以下の項目を体系的に盛り込むことで、経営層への説明や現場への展開がしやすくなります。
- 育成対象:新入社員・中堅社員・管理職など、対象とする階層や職種を明確にする
- 育成目的:経営戦略や人材課題と紐づけ、「なぜこの人材の育成が必要か」を示す
- 到達目標:対象者が育成終了時点で発揮できるようになるスキル・行動を具体的に記載する
- 育成テーマ:階層・職種・課題に応じて設定する育成の重点領域(例:リーダーシップ、DXリテラシー、マネジメントスキルなど)
- 育成施策:OJT・OFF-JT・自己啓発など、どのような手段で育成を行うかを整理する
- 実施時期:年間カレンダーをベースに、研修実施・評価・計画見直しの時期を明示する
- 関係者・役割分担:人事・現場管理職・経営層それぞれが担う役割を整理する
- 効果測定の方法:到達目標の達成をどのように確認・評価するかを定める
項目ごとに「何をどう書くか」を明確にしておかないと、計画書が形式だけのものになりやすいという落とし穴があります。記載の粒度を揃えることで、現場担当者が読んでも実際に動ける計画書になります。作成にあたっては、厚生労働省や業界団体が公開しているフォーマットも参考にしながら、自社の実情に合った書式を整えるとよいでしょう。
階層別の育成計画記入例
以下に、階層別の育成計画の記入例を示します。実務で計画を設計する際の参考としてご活用ください。
【記入例:新入社員向け育成計画】
項目 | 記入例 |
育成対象 | 新入社員(全職種・2025年4月入社) |
育成目的 | 社会人としての基礎を習得し、配属部門で自律的に業務を遂行できる人材を育成する |
到達目標 | 入社6ヶ月以内に、担当業務を上司のサポートなしで遂行できる状態になる |
育成テーマ | ビジネスマナー、業務基礎スキル、自社理解、コミュニケーション |
育成施策 | 入社時集合研修(4月)、配属後OJT(トレーナー制度)、フォローアップ研修(6月・9月) |
実施時期 | 2025年4月〜2025年9月(6ヶ月) |
関係者・役割 | 人事:計画立案・研修運営/OJTトレーナー:日常指導/上司:進捗確認・評価 |
効果測定 | 6ヶ月後の業務習熟度チェックシート、上司・本人によるフィードバック面談 |
【記入例:管理職向け育成計画】
項目 | 記入例 |
育成対象 | 課長・マネージャー職(全部門) |
育成目的 | 経営戦略を現場に落とし込み、チームのパフォーマンスを最大化できるマネジメント力を強化する |
到達目標 | メンバーの目標設定・育成・評価を適切に行い、チーム目標を継続的に達成できる状態になる |
育成テーマ | 戦略的思考、マネジメントスキル、1on1・フィードバック、人材アセスメント |
育成施策 | 管理職向けマネジメント研修(5月・10月)、外部ビジネススクール派遣、経営層との対話セッション |
実施時期 | 2025年4月〜2026年3月(通年) |
関係者・役割 | 人事:計画立案・研修手配/経営層:方針共有・評価への関与/本人:現場実践・内省 |
効果測定 | メンバーのエンゲージメントサーベイ、チーム目標達成率、上位職による評価(年2回) |
人材育成計画の立て方|6つのステップ
人材育成計画は、思いつきや前年踏襲で作り始めると、現場の実態とズレた計画になりやすいものです。経営戦略の確認から効果測定まで、以下の6つのステップを順番に踏んで設計することが重要です
また、各ステップには人事・現場・経営それぞれが関わるフェーズがあります。誰が何を担うかを事前に整理しておくと、関係者を巻き込みながら計画づくりをスムーズに進められるでしょう。
STEP1:経営戦略・目指す人材像を確認する
人材育成計画を立てる起点は、「自社がどのような人材を必要としているか」を明確にすることです。育成施策はあくまでも経営戦略を実現するための手段であり、「どんな人材が必要か」という問いから出発することが前提となります。
この段階で重要なのは、人事部門だけで人材像を決めようとしないことです。経営層や現場責任者と対話しながら、目指す人材像を言語化・合意形成するプロセスを丁寧に行うことが、計画全体の方向性を決める起点になります。「経営が求める人材像」と「現場が必要としている人材像」にギャップがある場合は、この段階で擦り合わせておくことが、後工程での混乱を防ぐことにつながります。
STEP2:現状のスキル・課題を把握する
目指す人材像が定まったら、次は「現状の人材がどの状態にあるか」を把握します。従業員のスキルマップや人材データを収集・整理し、「目標とする人材像」と「現状」のギャップ(スキルギャップ)を明確にすることが、このステップの目的です。
スキルギャップが特定できると、「誰に」「何を」「いつまでに」身につけさせるべきかの優先順位が立てやすくなります。全員に同じ研修を実施するのではなく、課題に応じて施策を絞り込めるため、限られた予算・時間をより効果的に使えるようになるでしょう。現場ヒアリングや360度評価、スキルチェックシートの活用なども、現状把握の有効な手段です。
STEP3:育成目標を設定する
スキルギャップが把握できたら、具体的な育成目標を設定します。ここで重要なのは、組織全体の目標と個人の目標を紐づけて設定することです。「会社の方向性と自分の成長が一致している」という納得感は、従業員の主体的な学習意欲を引き出すうえでも欠かせない要素といえます。
また、目標を短期・中期・長期に分けて設定することで、進捗確認や計画の修正がしやすい構造になります。長期目標(3〜5年)の下に中期目標(1〜2年)、さらに短期目標(半期・四半期)を設けるといったように、時間軸を階層的に設計しておくと、PDCAを回しやすくなります。
STEP4:育成手法・施策を選ぶ
育成目標が定まったら、具体的な育成手法・施策を選びます。育成手法は大きく以下の3つに分類されます。
- OJT(職場内訓練):業務を通じた実地教育。日常的なフィードバックや先輩社員によるコーチングが代表的
- OFF-JT(職場外訓練):業務から離れた研修・セミナー・eラーニングなど
- 自己啓発(SD):資格取得・読書・外部セミナー参加など、従業員自身が主体的に行う学習
それぞれ目的や効果が異なるため、対象者の階層や課題の内容に応じて手法を組み合わせることが、育成効果を高めるうえで重要なポイントとなります。たとえば、新入社員に対してはOJTとOFF-JTを組み合わせた入門研修、管理職候補にはリーダーシップ研修と実務プロジェクトへのアサインを組み合わせるといった設計が考えられるでしょう。
かんき出版の社員研修では、以下の資料で研修計画の立て方を解説しています。どのような研修を実施すれば、人材育成の計画に沿った人材が育つかわからない方はぜひ参考にしてみてください。

STEP5:年間スケジュールを組む
施策が決まったら、4月〜翌3月の年間カレンダーをベースに、研修実施・面談・評価・計画見直しのタイミングを一覧で整理します。この「年間育成カレンダー」を作ることで、抜け漏れを防ぎやすくなるとともに、現場との調整もしやすくなります。
スケジュールを組む際は、予算策定時期や人事評価のサイクルから逆算して、早めに年間計画の骨格を固めることが重要です。研修の申し込み期限や外部講師の確保などには時間がかかる場合もあるため、余裕を持ったスケジュール設計を心がけましょう。
STEP6:効果測定・見直しをする
計画を実行したら、育成施策の効果を測定し、次のサイクルに活かす振り返りを行います。効果測定には、「反応・学習・行動・成果」の4段階で評価するカークパトリックモデルが広く活用されています。
- Level 1(反応):研修への参加者の満足度・反応
- Level 2(学習):知識・スキルの習得度
- Level 3(行動):業務における行動変容
- Level 4(成果):業績・組織への影響
計画は一度作って終わりではありません。PDCAを継続的に回しながら、実態に即して柔軟に修正していく姿勢が、計画の形骸化を防ぐうえで不可欠です。毎年同じ研修を繰り返すのではなく、効果測定の結果をもとに「続けるもの・変えるもの・やめるもの」を判断することが、育成投資の効果を高めることにつながります。

人材育成計画を立てる際の注意点
人材育成計画を作成する際には、いくつかの落とし穴があります。特に初めて担当する方が陥りやすいポイントを3つ挙げます。
計画書を作ること自体が目的化してしまう
書類として整った計画書が完成することに満足してしまい、現場で活用されないケースは少なくありません。計画の実効性を常に意識し、「この計画に沿って現場が実際に動けるか」という視点で設計することが重要です。
また、経営戦略と紐づかない計画は、上申時に承認を得にくくなります。「なぜこの施策が必要か」を経営目標や人材課題に結びつけて説明できるよう、計画の根拠を整理しておきましょう。
現場を巻き込まずに作ってしまう
人材育成は、人事部門だけで完結するものではありません。現場へのヒアリングなしに計画を作ると、実際の業務課題とズレた施策になりやすく、現場からの協力も得にくくなります。計画段階から現場の管理職・リーダー層を巻き込み、「現場が感じている育成課題」を丁寧に拾い上げることが、実行力のある計画づくりの基本です。
目標・評価指標が曖昧なまま進めてしまう
「コミュニケーション力を高める」「主体性を育てる」といった抽象的な目標だけでは、効果測定ができません。目的・対象者・評価指標が曖昧なままでは、育成の成果を確認することも、次の計画に活かすことも難しくなります。定量的な指標(テストスコア、目標達成率など)と定性的な評価(上司・本人のフィードバック)を組み合わせて、評価基準を具体化しておくことをおすすめします。
まとめ
人材育成計画とは、経営戦略と連動しながら「誰を・何のために・どう育てるか」を体系的に定めた中長期ロードマップです。6つのステップを順に踏みながら設計し、計画の形骸化・現場との連携不足・評価指標の曖昧さという落とし穴を意識することが、実効性のある育成体制につながります。初めて担当する方は、フォーマットの完成度にこだわるよりも、自社の経営課題・人材課題に合わせた骨格づくりからスタートすることをおすすめします。
育成計画が固まったら、次のステップは計画に沿った研修設計や育成施策の具体化です。かんき出版の社員研修では、貴社の育成計画をもとに、階層別・テーマ別の研修プログラムの設計・実施までをご支援しています。「計画は作ったが、具体的な施策に落とし込めない」という段階からでもお気軽にご相談ください。年間960件以上の研修実績をもとに、貴社の課題や組織規模に合わせた最適なプログラムをご提案いたします。
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