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近年、多くの企業で公募型研修やeラーニング、資格取得支援制度など、社員が自ら学べる環境づくりが進んでいます。しかし、「募集しても応募が集まらない」「学習コンテンツが活用されない」「毎回同じ社員しか参加しない」といった悩みを抱える企業は少なくありません。
2026年8月4日に開催した本セミナーでは、公募型研修が機能しない原因を「制度設計」と「社員の学ぶ姿勢」の両面から整理し、人事・人材開発部門が取り組むべき改善策について解説しました。本レポートではその一部をご紹介します。
公募型研修が機能しない…こんな課題はありませんか?
社員が自ら学びたい研修を選び、手を挙げて参加する「公募型研修」。階層別研修や管理職研修のように会社から受講を指定される研修とは異なり、社員の主体性を尊重しながら、必要な知識やスキルを身につけてもらえる仕組みです。
企業にとっても、学び続ける組織風土の醸成や社員の自律的なキャリア形成、部門を越えた交流の促進など、さまざまな効果が期待できます。また、意欲のある社員に重点的に教育機会を提供できるため、比較的低いコストで質の高い人材育成を実施しやすい点もメリットです。
一方、制度を導入しただけでは、必ずしも社員が集まるとは限りません。実際の現場では、次のような悩みがよく聞かれます。
- 定員を設けて募集しても、数名しか応募がない
- 毎回参加する社員が固定化している
- 若手社員やバックオフィス部門の社員ばかりが参加する
- 営業部門や中堅社員など、本来参加してほしい層が集まらない
- 資格取得支援や外部講座の補助制度を整えても、利用者がほとんどいない
公募型研修を全社員に開放していても、参加者が一部の社員に偏ってしまえば、組織全体の人材育成にはつながりません。募集のたびに同じ社員だけが手を挙げ、それ以外の社員は何年も研修を受けていないというケースもあります。
こうした状況に対して、「研修テーマに魅力がないのではないか」「もっと有名な講師を起用すべきではないか」と考える人事・人材開発担当者も少なくありません。しかし、社員が集まらない原因は、研修内容だけにあるとは限りません。
告知が対象者に届いていない、受講するメリットが分かりにくい、上司への相談や業務調整で申込みが止まっているなど、制度設計や運用に課題がある場合もあります。さらに、社員自身が「なぜ学ぶ必要があるのか」「自分は何を学ぶべきなのか」を理解できていない可能性もあります。
公募型研修を機能させるためには、研修メニューを増やすだけでは不十分です。まずは、社員が参加しない背景を整理し、制度と社員の学ぶ姿勢の両面から課題を捉えることが必要です。

社員が学ばない組織を放置すると何が起こるのか
社員が学ばない状態を放置すると、公募型研修だけでなく、企業の競争力や人材育成施策全体にも影響が及びます。ここでは、主なリスクを紹介します。
学びを止めた組織は変化に対応できない
現在は、将来を予測することが難しいVUCA時代から、さらに複雑で不確実性の高いBANI時代へと移り変わっています。市場環境やテクノロジーは急速に変化し、過去の成功体験だけでは競争力を維持できません。市場変化に対応できなかった企業の事例や、世界企業ランキングの変化を見ると、「変化し続ける企業だけが生き残る時代」であるということが言えます。
このような危機感を伝える手法として、「バッドシナリオメイク」があります。将来起こり得る最悪の状況をあえて言語化することで、「このままではいけない」という危機感を自分ごととして捉えやすくなります。その結果、具体的な行動や学びにつながりやすくなるのです。
人材育成投資が成果につながらない
近年、多くの企業が公募型研修やeラーニング、資格取得支援制度など、人材育成への投資を進めています。しかし、制度を整えるだけでは社員は自発的に学ぶようにはなりません。
社員自身が「なぜ学ぶ必要があるのか」「学ぶことでどのような成長につながるのか」を理解していなければ、せっかく用意した教育機会も十分に活用されず、研修参加率や学習効果は期待したほど高まりません。人材育成施策の成果を高めるには、制度づくりとあわせて、社員の学ぶ意欲や主体性を育てる視点が欠かせません。
だからこそ、公募型研修の参加率を高めることだけを目的にするのではなく、「社員が学ぶことを当たり前と考える文化」を育てることが、人材育成全体の成果につながるのです。
公募型研修に社員が集まらない原因は2つある
公募型研修に社員が集まらない原因は、大きく2つに整理できます。一つは制度設計や運用の課題、もう一つは社員の「学ぶ土台」が育っていないことです。どちらか一方だけを改善しても十分な効果は期待できず、両方の視点から見直すことが重要です。
原因① 制度設計・運用に課題がある
社員が研修に申し込むまでには、「認知」「判断」「申込」という3つのステップがあります。制度設計や運用に課題がある企業では、このいずれかの段階で社員が離脱してしまっています。
まず「認知」の段階では、募集案内が対象者まで十分に届いていないケースがあります。メールを配信しただけで周知したつもりになっていたり、部門長や上司からの案内が行き届いていなかったりすると、そもそも研修の存在を知らない社員も少なくありません。また、人事評価制度や目標管理制度との関連性が見えないため、「自分には関係ない」と受け止められてしまうこともあります。
次の「判断」の段階では、「自分に必要な研修だ」と感じてもらえるかが重要です。研修タイトルだけでは内容が伝わらない、対象者が曖昧、受講によって得られるメリットが分からない、拘束時間や事前課題が見えないなどの状態では、社員は参加をためらってしまいます。
最後の「申込」の段階では、上司への相談や業務調整が障壁になるケースもあります。上司が受講を判断するための情報が不足している、繁忙期や定例会議と日程が重なっている、申込手続きが煩雑であるなど、制度運用上の小さな課題が積み重なることで、参加機会を逃してしまうことがあります。
このように、公募型研修が機能しない原因は、研修内容そのものではなく、参加しやすい仕組みが十分に設計されていないことにもあるのです。

原因② 社員に「学ぶ土台」が育っていない
制度を改善しても、それだけで社員が積極的に学ぶようになるとは限りません。もう一つの大きな要因が、社員自身の「学ぶ土台」が十分に育っていないことです。
その背景として、社員が「学ぶ必要性を理解できていない」「何を、どのように学べばよいか分からない」という2つの課題があります。学ぶ目的や方法が明確でなければ、公募型研修が用意されていても、自ら参加しようという行動にはつながりません。
実際、リクルートワークス研究所の調査では、「昨年1年間に自分の意思で仕事に関する知識や技術の向上に取り組んだ」と回答したビジネスパーソンは26%にとどまり、74%は自主的な学習を行っていないという結果が示されています。これは、公募型研修に人が集まらない課題が、多くの企業に共通する背景を持っていることを示しています。
制度設計や運用は、人事・人材開発部門が比較的改善しやすい領域です。一方で、本当に重要なのは、社員一人ひとりの「学ぶ姿勢」を育てることです。制度だけを見直しても、社員自身が学ぶ必要性を感じていなければ、公募型研修はなかなか機能しません。
日本ではメンバーシップ型雇用が中心であることや、OJTへの依存、日々の業務の忙しさなども、社員が主体的に学ぶ文化が育ちにくい要因として考えられます。しかし、これらを「仕方がない」と片付けるのではなく、人事・人材開発部門には、社員へ「学ぶ必要性」を伝えること、「どう学べばよいか」を支援することの両方が求められるのです。

人事・人材開発部門が取り組むべき4つの改善策
① 認知・周知の設計を見直す
まず見直したいのは、「社員に情報が届いているか」という点です。
メールを一斉配信しただけで、「周知できた」と考えていないでしょうか。対象者が募集情報を見ていなければ、どれほど魅力的な研修でも参加にはつながりません。
部門長や上司からも案内してもらう、人事評価制度や目標管理制度と関連づけて伝えるなど、社員が自然と情報に触れられる仕組みをつくることが大切です。「募集した」ではなく、「対象者に届いた」と言える状態を目指してください。
② 社員が判断しやすい募集内容にする
社員は、「研修がある」と知っただけでなく、「自分に必要な研修なのか」「参加することで何が得られるのか」が分かって初めて、受講を検討します。
そのため、募集案内には研修タイトルだけでなく、対象者や受講後に得られるメリット、学べる内容、拘束時間や事前課題なども具体的に記載することが重要です。
また、研修名も専門用語だけではなく、「どんな課題を解決できる研修なのか」が一目で分かるタイトルにするだけで、参加率が変わるケースもあります。社員が「自分のための研修だ」と判断できる情報を提供することが重要です。
③ 上司が後押ししやすい環境を整える
公募型研修では、社員本人だけでなく、上司の理解も重要な要素です。
実際には、「忙しいから今回は見送ろう」と上司が参加を控えさせてしまうケースも少なくありません。研修の目的や期待される効果、業務への活かし方を共有するとともに、繁忙期を避けた日程設定や、短時間で完了できる申込方法など、参加しやすい運用も見直してみてください。
社員だけでなく、上司も「参加させたい」と思える環境を整えることが、公募型研修の定着につながります。
④ 学ぶ土台を育てる
最も重要だと考えているのは、「学ぶ土台」を育てることです。
そのためには、まず社員に「なぜ今、学ぶ必要があるのか」を伝えなければなりません。変化の激しい時代において、学び続けることが自分自身の成長やキャリア、そして会社の未来につながることを理解してもらうことが第一歩です。
さらに、「何を学べばよいか分からない」という社員には、学ぶテーマの選び方や学習方法まで支援することも必要です。学ぶ必要性と学び方の両方を支援してこそ、公募型研修は本来の役割を果たすと考えています。
公募型研修は、単に研修を募集する制度ではありません。社員が主体的に学び続ける文化を育てるための仕組みとして運用することが重要なのです。
社員が「学びを自分ごと化」するには
制度を整えるだけでは、社員は自ら学び始めません。大切なのは、社員自身が「なぜ学ぶのか」「何を学ぶべきか」を理解し、自分に合った学び方を見つけることです。
学ぶテーマは「難易度」と「仕事への影響度」の2軸で整理することがおすすめです。まずは難易度が低く、仕事への影響が大きいテーマから取り組むことで、小さな成功体験を積み重ねやすくなります。
また、学びは必ずしも研修だけではありません。動画や音声、ニュース記事など、日常生活の中で無理なく続けられる方法から始めることも十分な学習になります。社員が「学び方」そのものを理解し、自分に合った方法を見つけることが、公募型研修を継続的に活用する土台になります。
こうした考え方を身につけるため、かんき出版の社員研修では「学び方を学ぶ」ワークショップをご提供しています。学ぶ必要性やテーマの選び方、情報収集の方法、アウトプットのコツなどを体系的に学ぶことで、公募型研修だけでなく、その後の主体的な学びにつなげることを目指しています。
まとめ|公募型研修を成功させる鍵は「学ぶ文化づくり」
公募型研修に社員が集まらない原因は、「社員の意欲が低いから」と一言で片付けられるものではありません。制度設計や運用に改善の余地がある場合もあれば、社員自身が学ぶ必要性や学び方を理解できていないこともあります。
だからこそ、人事・人材開発部門には、参加しやすい制度を整えることに加え、社員が主体的に学び続けられる環境や文化を育てていく視点が求められます。
公募型研修は、単に研修を募集する制度ではなく、社員一人ひとりが学びを自分ごととして捉え、成長し続ける組織をつくるための仕組みです。そのためには、「何を学ぶか」だけでなく、「なぜ学ぶのか」「どう学ぶのか」まで支援することが重要です。
「募集しても参加者が集まらない」「毎回同じ社員しか受講しない」「公募型研修をもっと活性化させたい」といった課題をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の課題や運用状況に合わせて、公募型研修が機能する仕組みづくりをご提案いたします。
参加者の声
- 「社員に学ぶ必要性をどう伝えるか」という難しさに対し、バッドシナリオメイクなど新たなアプローチのヒントを得られた。
- 部門ごとの研修と全社共通研修の役割を改めて整理するきっかけになった。
- 公募型研修の制度だけでなく、社員の「学ぶ姿勢」を育てることの重要性を再認識した。
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