1on1が形骸化する理由とは?成果につながる対話へ再設計する方法を解説

形骸化した1on1を再起動させる手法~1on1の限界を超える2on2~

目次

近年、多くの企業で1on1が導入されています。しかし、「定期的に実施しているものの、報告会になってしまう」「管理職によって質にばらつきがある」「部下の主体性やキャリア支援につながらない」といった悩みを抱える企業も少なくありません。
2026年7月29日に開催した本セミナーでは、1on1が形骸化する原因を整理するとともに、人事・人材開発部門が取り組むべき支援策や、1on1を活性化する「2on2」という新たなアプローチについて解説しました。本レポートではその一部をご紹介します。

1on1を導入しても、このような課題はありませんか?

近年、多くの企業で1on1が導入され、人材育成やキャリア支援の施策として定着しつつあります。一方で、制度としては定着していても、現場では十分に機能していないケースも少なくありません。
たとえば、次のような状況です。

  • 上司から部下への業務確認や進捗報告の場になっている
  • 上司が一方的に話し、部下は聞くだけになっている
  • 部下が何を話せばよいか分からず、毎回同じ話題で終わる
  • 管理職によって進め方や対話の質に大きな差がある
  • 1on1支援ツールへの入力や、実施率を高めること自体が目的になっている

このような状態では、1on1は単なる定例ミーティングとなり、「時間だけが過ぎる制度」と受け止められてしまいます。実際、現場では通常の業務打ち合わせと変わらず、1on1が形骸化しているケースも少なくありません。

本来の目的と実際の成果には大きなギャップがある

実際、日本では7割以上の企業が1on1を導入しており、多くの企業で人材育成施策として定着しています。しかし、なぜ多くの企業でこのような状況が起きているのでしょうか。
その背景には、1on1の導入目的と、実際に得られている成果との間に大きなギャップがあることが挙げられます。

調査では、導入目的の上位は「部下の自律・主体性の向上」「自律的なキャリア形成の支援」でした。ところが、実際に得られた効果として多く挙げられたのは、「会話の機会が増えた」「部下の状況を把握しやすくなった」といった内容です。
もちろん、コミュニケーションが増えることは重要な成果です。しかし、本来期待していた「主体性の向上」や「キャリア形成の支援」といった行動変容までには至っていない企業が多いことが分かります。

つまり、多くの企業に共通する課題は、「1on1を実施すること」が目的となり、本来目指していた成果につながっていないことです。この背景には、制度そのものではなく、現場で1on1を機能させるための運用面に課題があるといえます。

1on1の現状と現場で起きている形骸化の実態

1on1が形骸化する3つの原因

1on1が形骸化する原因として、「上司」「部下」「組織」の3つの視点から整理します。

上司側のマインド・スキル不足

1on1では、管理職が部下の成長を支援する「伴走者」として関わることが求められます。しかし、導入時に「なぜ部下のために時間を使うのか」という目的を十分に理解しないまま制度が始まると、従来の業務管理の延長として1on1を進めてしまいがちです。上司側の目的の理解は重要です。
また、部下の話を引き出す傾聴力や問いかけのスキル、未来に向けた対話の進め方に自信を持てない管理職も少なくありません。その結果、上司が一方的に話す、業務報告を確認するだけといった面談になり、本来の目的である部下の主体性や成長を引き出す対話が実現しにくくなります。

部下側のマインド・スキル不足

1on1は上司だけが準備すればよいものではありません。部下自身も、「なぜ1on1を行うのか」「この時間をどのように活用すればよいのか」を理解していることが重要です。
しかし、部下側にその認識が十分浸透していないと、「何を話せばよいか分からない」「上司から質問されるのを待つだけ」といった受け身の姿勢になってしまいます。また、相談したいテーマの整理や、自身の考えを言語化する方法を知らないままでは、対話が深まらず、毎回同じような内容で終わってしまいます。

目的に対する投資不足

1on1は、一度制度を導入すれば自然に成果が出るものではありません。制度設計や上司向け研修だけで終わらせてしまうと、現場では徐々に形骸化してしまいます。
1on1は「特効薬ではなく漢方薬」のようなものであり、継続的な取り組みが必要になります。上司・部下双方への研修やフォローアップ、実践内容の振り返り、好事例の共有など、制度を定着させるための継続的な投資があって初めて、本来の効果を発揮できます。実施率だけを追うのではなく、対話の質を高める仕組みづくりが重要です。

1on1が形骸化する3つの要因

人事が取り組むべき「1on1を機能させる仕組み」

1on1を成功させるためには、制度を導入するだけでは不十分です。1on1を組織に定着させ、部下の成長や主体性の向上につなげるためには、人事が継続的な仕組みづくりを担うことが重要です。実際に成果を上げている企業では、制度設計に加え、目的の浸透や上司・部下双方への理解促進、フォローアップまでを一連の施策として実施しています。

目的を浸透させ、上司・部下双方の理解を深める

1on1を機能させるために最も重要なのは、「なぜ1on1を実施するのか」という目的を、上司・部下の双方が理解することです。
制度やルールだけを整えても、「部下の成長を支援するための時間」という共通認識がなければ、業務報告や進捗確認の場になりやすくなります。成果を上げている企業では、制度の説明だけでなく、1on1が目指す目的や期待する役割を繰り返し発信し、組織全体へ浸透させています。
また、目的を理解するだけでなく、実践できるように支援することも欠かせません。管理職には、傾聴やフィードバックなど、部下の考えを引き出すための対話スキルを身につける機会が必要です。
一方、部下に対しても、自ら相談テーマを整理する方法や、上司を活用しながら対話を進める考え方を伝えることで、受け身ではない1on1へと変わっていきます。

対話テーマを整理し、質の高い対話につなげる

1on1では、「何を話すか」が曖昧なままでは、毎回同じような内容になり、対話が深まりません。
そこでおすすめするのが、「すり合わせ9ボックス」というフレームワークです。業務だけでなく、キャリアやライフスタイル、人間関係、組織方針など、個人・業務・組織の3つの視点と、過去・現在・未来の時間軸を組み合わせて対話テーマを整理することで、部下が抱える課題や将来の方向性について幅広く話し合えるようになります。

すりあわせ9ボックス

フォローアップで実践を支援する

研修を一度実施しただけでは、1on1は定着しません。
成果を上げている企業では、実践後にフォローアップ研修を行い、現場での成功事例や課題を共有する機会を設けています。実践と振り返りを繰り返すことで、新しいマネジメントスタイルが習慣化され、管理職も継続的にスキルを磨くことができます。

また、人材の成長は「現場での経験」と「上司や周囲からのフィードバック」が大きな割合を占めるという「70:20:10モデル」があります。研修だけで終わらせず、現場実践と振り返りを組み合わせることが、教育効果を高めるポイントです。

このように、1on1の形骸化を防ぐためには、「制度を導入すること」ではなく、「制度を機能させ続ける仕組み」を整えることが重要です。人事が目的の浸透、上司・部下双方への支援、フォローアップ、対話ツールの整備といった対処策を継続的に実施することで、1on1は部下の成長を支える仕組みとして定着していきます。

1on1をさらに活性化する「2on2」という選択肢

1on1は、導入し、運用が軌道に乗った後も、マンネリ化や儀式化を防ぐための継続的な工夫が必要です。その具体的な施策として「2on2」という施策もあります。
2on2とは、上司と部下のペアに別の上司・部下や関係者が加わって対話を行う手法です。普段とは異なる視点が加わることで、新たな気づきや解決策が生まれ、1on1では得られない学びが期待できます。
また、2on2は1on1の代替ではなく、1on1が機能していることを前提に、その効果をさらに高めるための発展的な取り組みです。まずは自社の運用状況を丁寧に見直し、そのうえで組織の課題に応じて取り入れることが重要です。
目的に応じて3つの代表的な活用パターンを紹介します。

上司・部下のペア同士で対話するパターン

一つ目は、上司と部下のペアが、別の上司・部下のペアと一緒に対話する方法です。
ほかのペアのやり取りや考え方に触れることで、自分たちのコミュニケーションを客観的に見直すことができます。同じような課題を抱えるペア同士であれば、互いの経験や工夫を共有し、新たな解決策を見つけることもできます。

管理職にとっては、ほかの上司がどのように部下へ問いかけ、話を引き出しているかを学ぶ機会にもなります。上司同士で対話の方法を学び合うことで、管理職ごとの1on1の質のばらつきを抑えることにもつながります。

課題に応じて関係者を加えるパターン

二つ目は、部下が抱えている課題に応じて、解決に必要な知識や経験を持つ関係者を交える方法です。
上司がすべての課題に答えを持っているとは限りません。専門性を持つ社員や他部署の担当者など、テーマに適した人に参加してもらうことで、部下はより具体的な助言や異なる視点を得られます。

また、上司が必要な人との接点をつくること自体も、重要な成長支援です。部下にとっては、自分の課題や成長に上司が関心を持ち、社内の人材や機会につないでくれたという実感が、上司への信頼にもつながります。

部門を越えて対話するパターン

三つ目は、異なる部門の上司・部下が参加する方法です。
営業と製造など、日常的に関わりがあっても、業務連絡だけでは互いの立場や背景まで理解することは難しいものです。2on2でそれぞれの課題や考え方を共有することで、相手の部門が何を重視し、どのような事情を抱えているのかを知ることができます。

こうした対話は、個人の成長支援だけでなく、部門間の関係性を改善する機会にもなります。相談や情報共有がしやすくなり、組織全体の連携を高める効果も期待できます。
2on2で重要なのは、単に参加人数を増やすことではありません。誰に参加してもらうことで、どのような視点や学びを得たいのかを明確にしたうえで、目的に応じて参加者を設定することが大切です。

1on1は「運用設計」が成果を左右する

1on1は、制度を導入しただけで成果が生まれるものではありません。実施率を高めたり、面談記録を残したりすることも必要ですが、それだけでは部下の主体性や成長を引き出す対話にはなりません。
大切なのは、何のために1on1を行うのかを上司と部下が理解し、双方が必要なマインドとスキルを身につけることです。さらに、研修後のフォローアップや実践事例の共有、対話テーマを整理するツールなど、現場で継続できる仕組みも整える必要があります。

人事には、1on1の実施を管理するだけでなく、対話の質を高めるための運用を支援する役割が求められます。現場の状況を確認しながら、必要に応じて研修や仕組みを見直し、継続的に改善していくことが重要です。

1on1を形骸化させないためには、制度を「導入して終わり」にせず、運用しながら育てていかなければなりません。1on1を基盤として、必要に応じて2on2などの新たな対話手法も取り入れることで、社員の成長や組織内の関係性を支える仕組みへと発展させることができます。
1on1の運用見直しやフォローアップ施策の設計、管理職・部下向け研修をご検討の際は、お気軽にご相談ください。

参加者の声

  • 部下側への研修と上司側のフォローアップは、1on1を定着させる上で重要だと感じた。
  • 1on1は導入後の継続的な運用や改善が必要であることがよく理解できた。
  • 部下側の心構えや、2on2など具体的なヒントが得られた。

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