目次
VUCA時代の激しい環境変化の中で、「アイディアは出るが実行されない」「現場で試行錯誤が生まれない」といった“行動の壁”に直面していないでしょうか。
本レポートでは、こうした課題を突破するための思考法と進め方を体系化した「実践型イノベーション研修」の全体像を解説します。講師は、ケンコーコムやセブン&アイなどで新規事業を多数立ち上げてきた、佐竹宏範氏。
従来の座学で知識を学ぶアプローチではなく、「まず、やってみてから考える」という行動を通じた学びを重視しています。「行動しながら考える力」「多様な視点を活かす力」「チームで共創する力」を中心に、どのように現場で活かせるようになるのかを体感的に紹介します。イノベーションを企業の文化として根づかせたい人事担当・人材育成担当者様に、新たな学びのヒントを感じていただける内容です。
パート1:佐竹宏範講師による「実践型イノベーション研修」の講義
1.経営層の理想と現場の現実:大企業が抱える「行動のギャップ」
変化の激しい現代、いわゆるVUCA時代において、企業が競争力を維持するためには、「探索的イノベーション」を推進できる人材が不可欠です。経営層が求める人材像は、もはや正確さや計画性ではなく、「創造性」へとシフトしています。
多くの経営者は、「自発的にアイディアを出し、改善し、自律的に行動する社員」を求めていると口を揃えます。
しかし、現場に目を向けると、この理想との間に大きなギャップが存在します。
- 「上はこう言っているから」と、上層部の意向を盾に動かない姿勢。
- 「失敗したらどうする? 責任は誰が取る?」と、新しい挑戦を躊躇する空気。
- 「とりあえず前例通りでいこう」という、既存の延長線上に留まる発想。
計画的な事業推進に長けてきた日本の大企業において、多様なメンバーとの「共創」や、不確実な状況下での「探索的アプローチ」には、さらなる成長の余地があるのが現状です。DXやオープンイノベーションといった変革の掛け声が、結果的に「議論で終わったり」「既存延長のアイディアしか出てこなかったり」といった課題は、どの企業にも存在します。
この行動のギャップを放置することは、組織の活力を奪い、新規事業やサービス開発の停滞を招きます。
2.計画から行動へ:「地図のない山登り」で視界を開く
なぜ、現場は立ち止まってしまうのでしょうか?
私は、答えのない時代を「地図のない山を登る」状況に例えてみます。
地図がない状況で頂上を目指すとき、従来の仕事の進め方(計画的な探求)に固執すると、「ちゃんと計画を立ててから行かなきゃ」「もう少し情報を調べないとリスクが高い」と考え、見えない頂上をひたすら見上げ、結局「麓(ふもと)で立ち止まって」しまいます。
しかし、このような不確実な環境で必要なのは、「計画を立てて、正しく進める力」よりも、「働きながら学び、仲間と一緒に形を作っていく力」です。
本研修が目指すのは、「まず、ちょっと登ってみる人」を育て、それを支える組織風土を構築することです。たとえ雲に覆われていても、まず一歩登ってみることで、突然雲の上に出て視界が晴れ、「頂上はあんな感じになりそうだ」「こうしたら登っていける」といった具体的な道筋が見えるようになるのです。
「実践型イノベーション研修」は、この「やってみることで見えてくる」という行動から学ぶアプローチをコンセプトとした実践型プログラムです。

3.「実践型イノベーション研修」の3つの特長と効果
本研修は、行動を通じて「変化を生み出す人と組織」を育てることに特化しており、難しい理論や思考フレームに頼る座学中心ではなく、体験を通じてスキルとマインドを身につけます。
3つの特長
特長1:対話と共感から「やってみたい」が生まれる
難しい理論や思考フレームに頼るのではなく、「ワイワイ話しているうちに、やってみたいが生まれる」環境を意図的に作ります。対話と共感を重視することで、受講者同士の心理的安全性が高まり、新しいアイディアの発想が促されます。
特長2:誰でも課題発見から提案づくりまでたどり着ける
イノベーションに必要な「課題発見」や「提案づくり」は、しばしば難解なフレームワークが必要とされますが、本研修では難しい思考フレームを用いず、気づきを形にするプロセスを体感的に習得します。
特長3:失敗を恐れず、小さく試す「行動から学ぶ」文化を醸成
イノベーションは「失敗が前提」です。この研修では「失敗の数を減らす」ことではなく、まず「小さく試す行動」を通じて、失敗を恐れずに次の一手を見つけていくアジャイルな進め方を身につけます。
受講者が得る具体的な変化
この実践を通じて、受講者と組織は以下の変化を実現します。
- 「正解を探す人」から「問いを立てて動く人」へ:自ら問いを立てて、自律的に行動する力が強化されます。
- 会議が「議論」から「共創の場」へ:互いのアイディアを尊重し、建設的に発展させる「共創の力」が身につきます。
- アイディアが「机上」から「行動」へ:計画や机上の空論で終わらせず、アイディアを短時間でプロトタイプ(試作品)化し、実践に移す力が向上します。
- 実践ワークの核心:共創と課題深掘りの手法
本研修では、共創力とアジャイル型の企画提案力を身につけるため、具体的なワークショップを行います。
ここからは、アジェンダ例の中からいくつかワークをご紹介いたします。
研修内容を具体的にイメージしていただければと思います。
ワーク1:相手の言葉にならない課題を言語化する
革新的な提案を生むためには、ユーザー起点で課題を捉えることが重要です。
目に見えている問題(氷山の一角)の奥にある、まだ誰も認識できていない「潜在的な課題」こそ、解決すべき核心であることが多いです。
目標は、相手の行動が「真似できるレベル」まで理解すること、つまり「相手のコスプレができる」くらい深く聞き出すことです。
例えば、「ドリルが欲しい」という表面的なニーズ(顕在的な要望)に対して、「穴を開けたい」という本質的なニーズを掘り下げ、さらに「穴を開けて何を実現したいのか」という真の目的(潜在的な課題)まで聞き出す手法を体感します。
実践ワーク「質問と要約ゲーム」では、参加者が「質問係」や「要約係」といった制約のある役割を演じることで、「いかに普段、人の話を聴いていなかったか」を内省し、課題を引き出すための傾聴スキルを体感的に習得します。
ワーク2:アイディアを発想する
アイディア発想のポイントは、「発散と収束を繰り返す」ことです。特に発散段階では「質より量」が求められます。
しかし、多くのチームでアイディアが膨らまない原因は、「いいアイディアを言おうとする」「『つまらない』と思われるのが怖い」ということがあります。また「アイディアを叩き潰すドリームキラー」の存在です。ドリームキラーは「難しい」「無理だ」「前例がない」といった否定的な言葉で、新しいアイディアを破壊してしまいます。
そこで、アイディアを爆発的に膨らませるために行うのが「Yes, And」というワークです。これは、ある人がアイディアを言ったら、次の人は必ず「いいですね!(受け入れ)」→「いいのはここ(抽出)」→「さらに重ねると(発展)」というプロセスを繰り返すゲームです。
このワークを通じて、参加者は、肯定的な共創の環境がいかにアイディアを膨らませ、チームに活力を生むかを体感し、「やっぱりイエスアンドでチームに接しなければならない」という気づきを得ます。
ワーク3:アイディアをまとめる
新しい価値を生み出すイノベーションにおいて、失敗は避けられません。重要なのは、「失敗の数を減らす」ことではなく、「失敗でかかるコストを減らす」ことです。
- 早く失敗しよう(Fail fast)
- たくさん失敗しよう(Fail often)
- 賢く失敗しよう(Fail small / smart)(お金をかけずに試すこと)
完璧を目指すのではなく、「完璧よりもまず完了させよう(Done is better than Perfect)」という考え方に基づき、短時間でアイディアを「エレベーターピッチ」にまとめ、フィードバックを受け、「創っては壊す」を繰り返します。このアジャイル型の進め方を体感することで、受講者は実践力を身につけます。

4.導入効果:組織変革への波及と多様な適用範囲
本研修は、単なるスキル習得に留まらず、ひとと組織文化そのものを育てる効果を持っています。
課題が違っても、変化を生み出すプロセスは同じです。それぞれのフィールドにあった形で実践できます。
● 組織を動かす:共創型チームづくり/組織風土改革/1on1実践
● 価値を生み出す:新規事業開発/提案力強化/営業力強化
● 変化を定着させる:DX推進/CX向上/業務改善/ファシリテーション
本研修の核となる「課題を見立てる→発想する→行動する」という共通の型はそのままに、企業の課題やフィールドに応じてテーマやスコープを柔軟にアレンジできます。
研修期間も、メインとなる「1日」プログラムだけでなく、行動の浸透を図る「半年間」にわたるプログラムデザインも可能です。特に組織風土変革を目指す長期プログラムでは、受講者の上司や経営層を巻き込みながら企画立案を進め、組織全体の変革へと導きます。
パート2:質疑応答(Q&Aセッション)
講師:佐竹 宏範氏
ファシリテーター:株式会社かんき出版 HRソリューション事業部 山縣道夫
山縣― 「共創」や「アジャイル型進行」が成果につながった具体的な事例を教えていただけますか?
佐竹氏―アイディア創出に留まらず、組織内の「共通言語化」や「摩擦解消」に大きな効果が見られました。
ある企業では、管理部門全体が会社変革の先導役となることを目指して研修を受講しました。結果として、多くのアイディアが出た中で、実行可能な小さな変革から導入が進みました。
この事例で最も大きかった成果は、アイディアそのものよりも、部門内で「共通言語ができた」ことでした。例えば、「今のってドリームキラーになってない?」といった言葉が実行中に自然と交わされるようになり、組織全体に「探索し、作り出す文化」が醸成されました。
また、新規事業企画を目的として、営業、開発、バックオフィスなど部門横断のチームで研修を実施した事例です。当然ながら1日で成功する新規事業は完成しませんが、インタビューワークを通して、参加者が「相手の立場から課題を解く」視点を持ったことが大きな転機となりました。これにより、部門間で発生しやすかった摩擦が解消され、お互いのことを理解し合い、その後のプロジェクトがスムーズに進むようになったという成果が得られています。
山縣― 研修で学んだ内容を、研修後も現場で活かすために、どんな工夫が必要ですか?
佐竹氏―「欲張らない」姿勢と、「小さなアクション」を上司に報告する仕組みが有効です。
研修で学んだ内容を現場で生かすことは難しい課題ですが、講師は、全てを一度に身につけようとするのではなく、「欲張らない」方が良いと考えています。重要なのは、研修でやったことを「自分の仕事の中で一体どう活かすことができるのか」という観点から考えることです。
この考えに基づき、現場での実践力を高めるために以下の工夫を推奨しています。
1. 学びの言語化とアクション設定: 研修の最後に、受講者自身に「今日やったことの中で自分なりに活かせること」を考え、そのポイントを明確にしてもらいます。さらに、24時間以内、1週間以内といった期限内で試せる「小さなアクション」を具体的に設定します。
2. 上司への報告: 学んだ内容や、試そうとしている「小さなアクション」を上司に報告するプロセスを導入します。これにより、「行動しなければならない」というプレッシャーが生まれ、研修内容を現場で生かすことにつながりやすくなります。
山縣― 本イノベーション研修は、どのような社員層に特に効果的ですか?
佐竹氏―新規事業担当者に限らず、様々な社員層に有効ですが、特に変化につながりやすい以下の3つの層が挙げられます。
1. ミドル層(管理職・管理職一歩手前):
現場を理解しつつ、上層部と現場の間で組織を動かす立場にあるため、研修で身につけた「問いを立てて動く力」や「共創力」をチームの変革や上司との交渉の中で発揮しやすいため、変化につながりやすいです。
2. 現場部門(営業・製造など):
日々顧客や現場の課題を直接感じているため、質の良い課題を見つけやすいというメリットがあります。また、アイディアを実際に「小さく試す」行動(アジャイル型進行)に結びつけやすく、変革につながりやすい傾向があります。
3. 技術者の方:
普段ステップバイステップで考える傾向がある技術者の方々が、本研修を通じて「まずやってみる」アジャイルな進め方や、「人とのコミュニケーションでうまく進む」ことを体感することで、新しいアプローチを受け入れてもらいやすいため、成果につながりやすいです。
研修は、単に「新規事業の作り方」を学ぶだけでなく、「自ら考えて動く人とチームを育てる」という共通の目的に基づき、組織風土改革やDX推進、営業力強化など、様々なフィールドに合わせたアレンジが可能です。この実践型アプローチが、貴社の組織変革を力強く支援します。
まとめ:学びを現場で活かすための工夫
研修で得た学びを現場で活かし、成果につなげるためには工夫が必要です。「欲張らないこと」、つまりすべてを身につけようとするのではなく、自分の仕事の中でどう活かせるかという観点から考えることが大事になります。
そのために、研修の最後には必ず「学びの言語化」を行い、受講者に「今日やったことの中で自分なりに活かせること」を考えさせます。そして、24時間以内、1週間以内といった期限内で試せる「小さなアクション」を設定させます。
さらに、その小さなアクションを上司に報告するプロセスを導入することで、「行動しなきゃいけない」というプレッシャーとなり、研修内容を現場で生かすことにつながりやすくなります。
参加者の声
- まさに新規事業に携わっているため、大変参考になった。
- アイディア出しの具体的な進め方がイメージできた。
- まず小さく試す行動が大切だとよく理解できた。
お問い合わせ
研修導入のご相談や、本セミナーの視聴を希望されるご担当者様は、以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。

■ 関連プログラム
