目次
「研修を実施しても現場の行動が変わらない」
「社員が日々の仕事に追われ育成の時間が取れない」
こうした悩みを抱える人事・研修担当者様は少なくありません。人的資本経営が叫ばれる昨今、人材育成は企業の生命線ですが、理想と現実のギャップに苦しむケースが後を絶ちません。
本記事では、かんき出版が年間850件以上の企業研修を手掛け、多種多様な業界の現場課題に向き合ってきた実績をもとに、人材育成がうまくいかない根本原因とその解決策を体系的に解説します。
人材育成でよくある4つの課題
企業が持続的に成長するためには、人の成長が欠かせません。しかし現場では、人材育成が思うように進まないケースが少なくありません。ここでは、多くの企業が直面する代表的な4つの課題について解説します。
社員が忙しく時間が取れない
最も頻繁に挙がる課題が「業務過多による時間不足」です。現場の社員は日々の業務や短期的な業績目標に追われており、緊急度は低いが重要度の高い「育成」が後回しにされがちです。
その結果、「見て覚えろ」という放置型のOJTになってしまったり、集合研修を実施しても「仕事が溜まるので早く戻りたい」と社員が集中できなかったりするケースが散見されます。
人材育成の効果が感じられない
研修や教育プログラムを実施しても、それが実際の業務成果につながっているかが見えにくいという課題です。「研修直後は意欲が高まるが、1週間もすれば元に戻ってしまう」「知識としては理解したが、実際の行動には反映されていない」といった声は多く聞かれます。
こうした事態が起こる主な原因は、育成施策が現場の業務課題と結びついていないことや研修後に行動変容を促すフォローアップの仕組みが整っていないことにあります。
人材育成の重要性に社員が気づいていない
会社がいくら機会を整えても、肝心の社員側が「やらされ感」を抱いていては効果は上がりません。特に中堅社員やベテラン層に多いのが、「今のやり方で十分成果が出ている」「研修は若手が受けるもの」という固定観念です。
こうした意識が根強いと、新しいスキルの習得や考え方のアップデートに対して消極的になり、せっかくの育成施策が空振りに終わってしまいます。
人材育成を計画的に行えていない
研修が場当たり的になり、中長期的な育成ロードマップが存在しないケースも少なくありません。「流行りのテーマだから」「他社もやっているから」という理由だけで研修を導入しても、それが経営戦略や求める人物像と結びついていなければ、一貫性のある人材育成は実現できません。
その結果、習得したスキルが断片的なものにとどまり、体系的な能力開発につながらないという課題が生じます。
人材育成が十分でないと発生する3つの問題
人材育成への投資を怠ったり、課題を放置したりすると、組織にはどのような悪影響が出るのでしょうか。ここでは深刻な3つのリスクについて解説します。
若手社員の早期離職
近年、若手社員が退職する主な理由として「この会社では成長できない」と感じたことが多く挙げられます。自分のキャリアに敏感な若い世代にとって、成長を実感できない環境や、スキルアップの機会がない職場は、将来への不安材料となります。
入社後のオンボーディングやキャリア支援が不十分なまま放置されると、優秀な人材ほど早い段階で見切りをつけ、離職してしまう可能性が高まります。
関連資料:新入社員の定着と早期戦力化を実現する体系的オンボーディング実践ガイド
社員のモチベーションの低下
新しい学びや挑戦の機会がない環境では、業務がルーティン化し、社員のエンゲージメント(仕事への貢献意欲)が徐々に低下していきます。
「この会社は自分の成長に関心がない」「期待されていない」という認識が広がると、組織全体の士気にも悪影響を及ぼします。その結果、生産性が下がるだけでなく、指示されたことだけをこなす「受け身」の風土が根付いてしまう恐れがあります。
次世代リーダー・中核人材の不足
長期的な育成を怠ると、いざ管理職やプロジェクトリーダーが必要になったとき、「任せられる人材がいない」という深刻な事態に陥ります。その場しのぎで外部採用に頼れば、採用コストがかさむだけでなく、企業文化とのミスマッチによる早期離職リスクも高まります。
経営戦略を理解し、現場を牽引できる生え抜き社員が育たない組織は、変化への対応力を失い、持続的な成長が難しくなります。次世代リーダーの不在は、企業の将来を左右する重大な経営課題です。
関連記事:人材育成におけるマネジメントスキルの伸ばし方|必要な能力と研修内容を解説
効果的な人材育成の進め方
人材育成の課題を解決し、組織の成長につなげるには、具体的にどのような手順で進めればよいのでしょうか。ここからは、効果的な6つのステップを紹介します。
組織の課題を洗い出す
まずは「何のために育成するのか」という目的を明確にすることから始めます。自社の経営戦略や事業目標を起点に、「現状の組織には何が足りないのか」「どのような人材がいれば目標を達成できるのか」を洗い出し、理想と現実のギャップを具体的に言語化しましょう。この工程を丁寧に行うことで、後続の育成施策に一貫性が生まれます。
社員のスキルを可視化する
組織の課題が明確になったら、次は社員一人ひとりのスキルを把握するステップです。
スキルマップやタレントマネジメントシステムを活用し、「誰が、どのようなスキルを持っているか」「目標達成に向けて何が不足しているか」を見える化します。こうしたデータに基づくアプローチにより、勘や経験に頼らない、根拠のある育成計画を立てることが可能になります。
人材育成の目標を定める
「いつまでに、誰を、どのような状態にするか」という具体的なゴールを設定します。会社全体の目標を立てるだけでなく、階層別(新入社員、中堅、管理職など)や職種別に細分化して落とし込むことが重要です。
目標は可能な限り定量化(例:資格取得率○%、売上達成率○%など)するか、具体的な行動レベルで設定すると、後の効果測定や評価がしやすくなります。
適切な育成方法を検討する
目標に合わせて最適な手法(アプローチ)を選定します。代表的な手法は以下の3つです。
- 社員研修:集合研修や外部セミナーなど、日常業務から離れた場で学ぶ方法です。体系的な知識の習得や、マインドセットの変革を促すのに効果的です。
- OJT(職場内訓練):上司や先輩が実務を通じて直接指導する方法です。実際の業務に即したスキルが身につくため、即戦力化に適しています。
- 自己啓発:eラーニングの受講や書籍購入補助など、社員が自主的に学ぶ機会を支援する方法です。個人の興味・関心に応じた自律的な成長を後押しします。
いずれか一つに偏るのではなく、対象者のレベルや習得すべき内容に応じて、これらを組み合わせることが効果的な育成のポイントです。
関連記事:人材育成に研修は必須?研修の始め方や内容、外部へ依頼する際のポイントを紹介
モチベーション管理を行う
研修の実施前には、「なぜこの研修が必要なのか」「自分のキャリアにどう役立つのか」を丁寧に説明し、学ぶ意義を納得してもらうことが大切です。目的が曖昧なまま参加させると、「やらされ感」が生まれ、学習効果が大きく低下します。
また、研修期間中や終了後も、上司との1on1ミーティングを定期的に実施し、日々の業務における悩みや不安を解消しながら、学習への意欲を継続させるサポート体制を整えましょう。「会社が自分の成長を応援してくれている」という実感が、社員の主体的な学びを後押しします。
育成の効果測定を行う
研修は「やりっぱなし」にしないことが鉄則です。実施直後のアンケートで満足度を測るだけでなく、数ヶ月後に「学んだことを実践できているか」「業務の成果に結びついているか」まで追跡することが重要です。
具体的には、上司へのヒアリングや360度評価などを活用して行動変容を確認します。もし期待した効果が出ていなければ、プログラムの内容や進め方を柔軟に見直し、PDCAサイクルを回して改善を続けましょう。
関連記事:やりっぱなしにしない!研修効果を見える化するための測定方法とは?
関連資料:研修の効果測定 3つのポイント
人材育成の課題に対して研修を導入した事例
人材育成の課題に対して研修を導入した会社を3社紹介します。
- 日興システムソリューションズ株式会社様
- 株式会社エナリス様
- 住友電装株式会社様
日興システムソリューションズ株式会社様
日興システムソリューションズ株式会社様では、若手社員からの報告内容が曖昧で、リーダー層が即座に判断できず業務が滞るという課題を抱えていました。過去に実施していた論理思考研修は難易度が高く定着しなかったため、よりシンプルで即効性のある「説明力向上研修」へ切り替え、7年間にわたり継続実施しました。
研修では「結論やポイント数を先に伝える」という簡潔な型を徹底的に指導。その結果、若手の報告スキルが劇的に向上し、リーダー層からの「報告がわからない」という相談がなくなりました。共通言語が生まれたことで意思疎通が円滑になり、開発工程での手戻り減少やコスト削減も実現しています。若手が「発信者責任」を自覚し、上司が迅速に意思決定できる環境が整ったことで、組織全体の生産性とマネジメント品質が向上した好事例です。
関連事例:すぐ実践できるフレームで「報告がわからない」を解消/日興システムソリューションズ株式会社
株式会社エナリス様
株式会社エナリス様では、エネルギー業界特有の専門用語や複雑な仕組みを扱うため、社内外でのコミュニケーションにおいて高い説明力が求められていました。しかし、会議やプレゼンで要点が伝わらない場面があり、特に組織のハブとなる中堅社員の「伝える力」不足が課題となっていました。そこで同社は、理論よりも実践を重視し、「結論から話す」「テーマ数を予告する」といったシンプルな型を学ぶ「説明力向上研修」を導入しました。
この研修は「すぐに使える」と社員から好評で、受講後の理解度は100%を達成しました。実際に社内会議の報告で研修のフレームワークを活用したところ、聞き手にとって非常に分かりやすい内容となり、即効性が確認されました。共通の「型」を持つことで、コミュニケーションの齟齬が減り、業務効率の向上やストレス軽減につながっています。専門性の高い事業だからこそ、基本の「型」を徹底することが組織力強化の鍵となった好事例です。
関連記事:満足度100%!説明のフレームを実践することで「伝える力」が向上/株式会社エナリス
住友電装株式会社様
住友電装株式会社様では、女性管理職比率向上という目標の達成に向け、数値目標だけでなく根本的な風土改革が必要でした。そこで、女性活躍を阻害する要因として「アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)」に着目。過去の経歴や性別による偏見で社員の可能性を狭めないよう、管理職1,400名を対象とした大規模な意識啓発に取り組みました。
研修にあたっては、社員の「やらされ感」を避けるため、一方的な講義ではなく「対話」を重視したプログラムを導入。1回約120名規模のオンライン形式ながら、投票機能やブレイクアウトセッションを活用して双方向性を確保しました。さらに、全12回の実施期間中も受講者の反応を見ながら内容を柔軟に改善し続けました。その結果、管理職の間で「今の発言は思い込みだったかも」といった気づきが生まれ、日常会話の変化や、個々の意欲に寄り添うマネジメント姿勢への意識変革が見られ始めました。
関連事例:女性活躍推進の一歩として管理職1,400名に届けた「対話型」研修の成果/住友電装株式会社
まとめ
人材育成には「業務が忙しく時間が取れない」「効果が見えにくい」といった多くの壁が存在します。しかし、これらの課題を放置すれば、若手社員の早期離職や組織の硬直化といった深刻なリスクを招きかねません。
本記事で紹介した事例のように、自社固有の課題を的確に捉え、現場の状況に合わせた研修を実施することで、社員の行動は確実に変わり、組織全体の成果につながります。「誰に、どうなってほしいのか」という目的から逆算し、自社の風土にフィットしたプログラムを設計することが成功への近道です。
かんき出版の社員研修では、丁寧なヒアリングを通じて貴社の課題を深く理解し、最適な講師選定とプログラムをご提案します。まずはお気軽にご相談ください。
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