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「人材が育たない」「研修が現場で活かされない」——こうした悩みは、多くの企業で共通しています。人材育成は経営に直結する重要テーマであり、研修の設計次第で成果は大きく変わります。
本記事では、人材育成における研修の役割や種類、効果的な設計手順、外部研修を活用する際のポイントまでを体系的に解説します。年間850件以上の研修実績を持つ「かんき出版の社員研修」の知見をもとに、失敗しない研修の考え方をお伝えします。
人材育成における研修とは?
人材育成における研修とは、日常業務からいったん離れ、計画的に学びの場を設ける育成手法(Off-JT)のことです。OJTだけでは習得しにくい理論やフレームワーク、仕事に向き合う姿勢などを、短期間で集中的に身につけられる点が大きな特徴です。
変化の激しい時代に企業が成長し続けるには、個人の経験や勘に頼るだけでは不十分です。組織全体で再現性のあるスキルや考え方を共有する必要があります。研修は、そうした組織力の土台をつくる戦略的な投資といえるでしょう。
研修のメリット/デメリット
研修を効果的に活用するためには、メリットだけでなく、デメリットも正しく理解しておくことが重要です。
研修のメリット
研修のメリットは以下4つです。
- 体系的な知識習得:断片的な経験ではなく、理論に基づいた全体像を理解できる
- 意識転換の機会:業務から離れることで、自身の役割や行動を客観的に見つめ直せる
- 教育内容の均質化:共通言語や判断基準を揃え、組織全体の方向性を統一できる
- 横のつながり創出:部署を超えた交流が生まれ、組織内の連携が強化される
研修のデメリット
一方、研修のデメリットは以下2つです。
- コスト・時間の負担:費用や稼働時間の投資が必要になる
- 現場定着の難しさ:フォローがなければ、学びが実践に結びつきにくい
研修は「実施すること」自体が目的ではありません。受講者の行動が変わることがゴールであるという点を、常に意識しておく必要があります。
人材育成の他の手法との比較
人材育成は研修(Off-JT)だけで完結するものではありません。以下の手法と組み合わせることで効果を最大化できます。
手法 | メリット | デメリット・課題 |
研修(Off-JT) | ・体系的な理論や知識を習得できる | ・費用や時間などのコストがかかる |
OJT | ・実践的で、すぐに業務へ活かせる | ・教える側のスキルによって質にバラつきが出る |
自己啓発 | ・本人の主体性や自律性を高められる | ・本人の意欲に依存するため強制しにくい |
それぞれの手法には強みと弱みがあるため、単独で用いるよりも組み合わせて活用することが効果的です。たとえば、研修で学んだ内容をOJTで実践し、振り返りながら自己啓発で補強していく設計が理想的といえます。
研修の種類
研修にはさまざまな形式があり、どれを選ぶかによって成果は大きく変わります。目的・対象者・内容に応じて、最適な手法を見極めることが重要です。
集合研修
講師と受講者が同じ会場に集まり、対面で行う研修形式です。グループワークやロールプレイングなど、双方向のコミュニケーションを重視するテーマに適しています。
たとえば、マネジメント研修やチームビルディング、新入社員研修などが代表的です。対面ならではの熱量が伝わりやすく、受講者同士の深い交流が生まれる点が大きなメリットです。
ただし、会場費や移動コストがかかるほか、全員のスケジュール調整が難しい場合もあるため、事前に日程や会場のキャパシティを確認しておくことが大切です。
オンライン研修
ZoomやTeamsなどのWeb会議ツールを使い、リアルタイムで実施する研修形式です。受講者は自宅やオフィスなど、場所を問わず参加できるため、全国に拠点がある企業やテレワーク中の社員への教育に適しています。会場費や移動コストを削減できる点も大きなメリットです。
一方で、画面越しでは受講者の表情や反応が読み取りにくく、講師が「伝わっているか」を把握しづらいという課題もあります。そのため、チャット機能で質問を募ったり、ブレイクアウトルームで少人数のディスカッションを取り入れたりするなど、双方向性を高める工夫が欠かせません。
eラーニング
録画された動画教材やスライド教材を、受講者が都合の良いタイミングで視聴して学ぶ形式です。コンプライアンス、情報セキュリティ、製品知識など、「正確な知識のインプット」を主目的とする研修に適しています。
学習管理システムを活用すれば進捗の一元管理が可能で、繰り返し学習もしやすい点がメリットです。一方で、受講者が一人で学ぶスタイルのため、モチベーションの維持や理解度の確認に工夫が求められます。
人材育成につながる研修の内容
研修の内容は、大きく「階層別」「テーマ別」「職能別」の3つに分類できます。それぞれの切り口を理解し、目的に応じて使い分けることが効果的な研修設計の第一歩です。
階層別研修
階層別研修とは、社員の役職や経験年数に応じて、求められる役割・能力を段階的に開発する研修です。
- 新入社員研修:ビジネスマナー、企業理念の理解、社会人としての基本姿勢やマインドセットを習得します。
- 若手社員研修:業務遂行力の向上、後輩への指導スキル、上司を支えるフォロワーシップを身につけます。
- 初級管理職研修(主任/係長/リーダー層):リーダーシップの基礎、チームマネジメントの考え方、部下育成の基本を学びます。
- 管理職研修:マネジメント能力、人事評価の進め方、組織運営、ハラスメント防止などを学びます。
関連記事:人材育成におけるマネジメントスキルの伸ばし方|必要な能力と研修内容を解説
テーマ別研修
テーマ別研修とは全社員または特定の課題を抱える層を対象に、組織として強化したいテーマを扱う研修です。代表的なものには以下があります。
- コンプライアンス・ハラスメント研修:法令遵守の意識を高め、健全な職場環境を維持するための研修
- DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)研修:多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる組織づくりを促進する研修
- メンタルヘルス研修:自身の心身の健康管理(セルフケア)や、管理職による部下へのケア(ラインケア)を学ぶ研修
- キャリアデザイン研修:社員一人ひとりが自律的にキャリアを考え、主体的に成長していくための研修
- 思考力研修(ロジカルシンキング・問題解決):論理的に物事を整理し、課題を特定・解決する力を養う研修
- DX/AI研修:デジタル技術やAIの基礎知識を習得し、業務への活用や変革を推進するための研修
職種別研修
職種別研修とは、職種ごとに必要な専門スキルや知識を習得するための研修です。
主な職種別研修の例
- 営業研修:セールスプロセスの基本から、交渉術、顧客の課題を引き出し解決に導く提案力までを習得します。
- 技術・IT研修:プログラミングやAI活用、データ分析など、業務に直結する技術スキルを強化します。
- 企画・マーケティング研修:ロジカルシンキングやマーケティングフレームワークを学び、戦略立案力を高めます。
人材育成に効果的な研修の始め方
「とりあえず流行りの研修を実施する」というアプローチでは、期待した成果にはつながりません。研修を成功させるためには、以下のステップに沿って企画・設計を進めることが重要です。
人材育成の課題を洗い出し研修の目標を立てる
まずは現状とあるべき姿のギャップを明確にします。「現場で何が問題になっているのか?」「経営目標を達成するために、どんなスキルが不足しているのか?」を分析しましょう。
そのうえで、「研修終了後に受講者がどういう状態になっていれば成功か」という具体的なゴールを設定します。ゴールは「○○を理解している」といった学習目標だけでなく、「○○ができるようになっている」という行動目標まで落とし込むことが重要です。
目標が曖昧なまま研修を実施すると、効果測定ができず、「やって終わり」になってしまいます。最初の段階で、関係者間でゴールイメージを共有しておきましょう。
関連記事:人材育成の課題をどう解決する?効果的な育成方法を事例を交えて解説
研修対象者を決める
課題解決に最もインパクトを与える層を見極め、研修対象者を選定します。
まず検討すべきは、研修を全社員一律で行うのか、それとも特定の部署・年次・選抜メンバーに絞るのかという点です。対象を広げすぎると費用対効果が下がり、逆に絞りすぎると組織全体への波及効果が薄れるため、課題の性質に応じたバランスが求められます。
また、対象者のスキルレベルや学習意欲によって、プログラムの難易度や進め方も調整が必要です。たとえば、基礎知識が不足している層にはインプット中心の内容を、すでに一定の経験がある層には実践演習やディスカッション中心の内容を設計するなど、受講者の状況に合わせた設計が研修効果を左右します。
研修の種類を決める
前述した「集合研修」「オンライン研修」「eラーニング」の中から、研修の目的や対象者の状況に合わせて最適な形式を選びます。以下を参考に、自社の状況に合った形式を検討してみてください。
- 知識のインプットが中心なら → eラーニング
- ディスカッションやワークを重視するなら → 集合研修
- 全国の拠点から参加者を集める必要があるなら → オンライン研修
また、単一の形式に限定せず、「eラーニングで事前に知識を習得し、集合研修で実践演習を行う」といった組み合わせ(ブレンディッドラーニング)も効果的です。
研修の内容を決める
内製(社内講師)で行うか、外部へ委託するかを決定し、カリキュラムを設計します。
内製が適しているケース
- 自社独自の業務フローやノウハウを継承したい場合
- 社内に十分な知見を持った講師候補がいる場合
外部委託が適しているケース
- 最新の知見や専門的なスキルを取り入れたい場合
- 社内リソースが限られている場合
- 第三者の視点で客観的な学びを提供したい場合
- 社内では伝えにくいテーマを扱う場合
- 研修設計や教材作成まで含めて任せたい場合
内製・外部委託のいずれを選ぶ場合も、この段階で具体的なタイムスケジュールやテキストの構成まで落とし込んでおくことが重要です。
研修の成果を振り返る
研修は「やりっぱなし」では意味がありません。実施後の振り返りこそが、育成効果を高める鍵となります。
まず、研修直後にはアンケートを実施し、受講者の理解度や満足度を確認します。しかし、それだけでは不十分です。本当に重要なのは、研修で学んだことが現場で実践されているかどうかです。
そこで、研修から1〜3ヶ月後を目安に、上司へのヒアリングや本人への振り返り面談を行い、「行動変容が見られたか」を確認しましょう。たとえば、「報告の仕方が変わった」「部下への関わり方が改善された」といった具体的な変化があれば、研修は成功といえます。
こうしたフィードバックをもとに、次回の研修内容をブラッシュアップしていくPDCAサイクルを回すことで、研修の質は着実に向上していきます。
関連記事:やりっぱなしにしない!研修効果を見える化するための測定方法とは?
関連資料:研修の効果測定 3つのポイント
社員研修を外部に依頼する際の見極め方
研修会社は数多く存在し、それぞれ得意分野や強みが異なります。ここでは、自社に合ったパートナーを見極めるためのチェックポイントを紹介します。
似たような課題・テーマでの研修実績はあるか
自社の業界や企業規模、抱えている課題と似た事例での実績があるかを確認しましょう。類似の課題を解決した経験が豊富な会社であれば、業界特有の悩みや陥りやすい落とし穴を熟知しているため、より的確で実践的な提案が期待できます。
経験豊富な講師が担当してくれるか
研修の満足度は「講師の質」で大きく左右されます。単に知識が豊富であるだけでなく、受講者の興味を引きつけ、主体的な発言を促す「ファシリテーション能力」が高いかどうかが重要なポイントです。
依頼前に、登壇予定の講師の経歴や実績、可能であれば過去の登壇動画などを確認させてもらうとよいでしょう。
研修内容を自社に合わせてカスタマイズしてくれるか
パッケージ化された既存プログラムをそのまま実施するだけでは、現場の実情に合わず、「自分ごと」として受け止めてもらえないことがあります。
事前のヒアリングを丁寧に行い、自社の事例をケーススタディに反映したり、業界特有の専門用語を社内で使われている言葉に置き換えたりと、柔軟にカスタマイズしてくれる会社を選びましょう。
体験セミナーは用意されているか
Webサイトの情報だけでは、研修の質を正確に判断するのは難しいものです。そこで活用したいのが、無料または安価で参加できる「体験セミナー」や「公開講座」です。
実際のプログラムの一部を体験することで、講師の話し方や進行の仕方、受講者への関わり方といった「空気感」を肌で感じることができます。また、運営事務局の対応レベルや、当日のサポート体制も確認できるため、契約後のミスマッチを防ぐうえで非常に有効です。
研修後のフォローが充実しているか
研修効果を持続させるための仕組みがあるかも重要なポイントです。具体的には、以下のようなサポート体制が整っているかを確認してください。
- 研修後の実践を支える仕組み(例:フォローアップコンテンツの提供、振り返り資料・ツールの共有)があるか
- 定着度を高める支援(例:行動計画の作成、実践状況の確認・フィードバック)があるか
研修は「当日だけで終わり」ではありません。学んだ内容を現場で実践し、定着させるまでが本当の研修です。そのため、研修当日以外のフォロー体制が充実しているかどうかは、パートナー選定において見落とせない視点といえます。
人材育成の課題に対し研修を実施した事例
人材育成の課題に対し、研修を実施した事例は以下2つです。
- リーダー育成の課題に対する事例
- 若手社員のコミュニケーション力を向上させた事例
リーダー育成の課題に対する事例
音声配信プラットフォームを運営する株式会社Spoon Radio Japan様では、日本事業の急成長に伴い組織が拡大し、若手社員が突如マネジメントを任される状況が発生しました。しかし、社内にリーダー育成のノウハウがなく、対象者からも「どうすればいいかわからない」と戸惑いの声が上がっていました。韓国本社からは「実行ありき」のスピード感を求められたため、個人の自主性に委ねる書籍学習ではなく、成果の均質化と即効性を見込める外部研修の導入を決断しました。
パートナー選定では、女性リーダーへの指導実績や韓国文化への理解、そして何よりレスポンスの速さを重視しました。その結果、依頼からわずか2ヶ月弱で全8回の実践的なプログラムを開始することに成功しました。研修を通じて社員の1on1スキルなどが向上したほか、現場の悩みを本社へ匿名でフィードバックすることで、日本拠点の実情に対する本社の理解も深まり、組織全体の結束強化につながりました。
関連事例:企業として初の研修に取り組むまで。スピード感をもって実施できた秘訣/株式会社Spoon Radio Japan
若手社員のコミュニケーション力を向上させた事例
日興システムソリューションズ株式会社様では、若手社員からの報告内容が曖昧で、上司の判断や業務進行が滞るという課題を抱えていました。以前は高度な論理的思考研修を実施していましたが、現場での即時実践には結びつきにくく、若手側にも「忙しい先輩に話しかけづらい」という遠慮がありました。
そこで同社は、理論よりも実践を重視し、すぐに使える「型」を習得する「わかりやすい説明力向上研修」を導入しました。「発信者責任」のマインドセットとともに、結論から話すシンプルなフレームワークを若手層へ徹底的に教育しました。その結果、報告の質が劇的に改善し、リーダー層からの相談が解消されました。共通のフレームワークが社内の共通言語となったことで、口頭報告だけでなく文書作成の効率も上がり、手戻りの削減や若手の成長スピード加速という大きな成果につながっています。
関連事例:すぐ実践できるフレームで「報告がわからない」を解消/日興システムソリューションズ株式会社
まとめ
人材育成において、研修は社員の能力を最大化し、組織の競争力を高めるための重要な投資です。OJTだけに頼らず、体系的な知識習得やマインドセットの変革を促す研修を組み合わせることで、育成スピードは大きく向上します。
効果的な研修を実現するには、自社の現状とあるべき姿のギャップを分析し、「誰に」「何を」「どのように」学ばせるかを戦略的に設計することが不可欠です。そして、研修を一過性のイベントで終わらせず、現場での実践と振り返りを通じて定着させるプロセスが求められます。
かんき出版の社員研修では、丁寧なヒアリングに基づき、貴社の課題や組織風土に合わせた最適なプログラムをご提案します。人材育成に関するお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
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