アドラー心理学とは?自分に勇気を与え、人生を自ら切り開く

アドラー心理学とは?自分に勇気を与え、人生を自ら切り開く

目次

人生が大きく変わるアドラー心理学入門「仕事やプライベートでの人間関係がうまくいかない」「もっと自分に自信を持ちたい」「折れない心をつくりたい」など、対人関係や自分自身に関する悩みを抱えています。アドラー心理学は、私たちが自分の人生を自らの力で切り開く大きな助けとなります。
本コラムでは、拙著『人生が大きく変わるアドラー心理学入門』から、アドラー心理学の5つの理論、勇気づけ、共同体感覚などアドラー心理学の解説や、ビジネスでアドラー心理学を活用するヒントを紹介します。研修導入をご検討の方もぜひお読みください。

アドラー心理学とは?

アドラー心理学とは、アルフレッド・アドラーが築き上げた心理学です。アドラーは、フロイト、ユングとともに「心理学の3大巨頭」と呼ばれ、現代のパーソナリティ理論や心理療法を確立した一人です。アドラー心理学は、部下育成や子育てなどビジネス・プライベートの両方の人間関係に効果の高い心理学と言われています。
アドラー心理学は、「自己決定性」「目的論」「全体論」「認知論」「対人間関係論」の5つの理論と、「勇気づけ」の技法、「共同体感覚」という価値観で構成されています。

アドラー心理学は、「自己決定性」「目的論」「全体論」「認知論」「対人間関係論」の5つの理論と、「勇気づけ」の技法、「共同体感覚」という価値観で構成されています。

アドラー心理学の5つの理論

「自己決定性」「目的論」「全体論」「認知論」「対人間関係論」の5つの理論の基本的な考え方のポイントを一つずつ解説します。

①自己決定性-置かれた環境をどう捉え、どのように対応するのかを決めるのは自分自身

人には、自ら運命を創造する力があります。環境や過去の出来事の犠牲者ではありません。アドラーは、「人は自分の運命の主人公である」と言っています。育ってきた環境やハンデなどが性格形成に影響を与えますが、「〇〇のせいで私は不幸」と言っていても前には進めません。それらの影響をどう解釈し、そこからどう行動するかを決めるのは自分自身です。
何かを決めるときに、どの方向に向かって自己決定するのかが重要です。判断基準は、「自分と他人にとって建設的な方向か、非建設的か」であるかです。この基準で物事を判断するようになると、人のせいにすることがなくなり、自分の決断に責任が持てます。

②目的論-人の行動には目的がある

人のあらゆる行動には、必ずその人自身の思いを伴った目的があります。その考え方を「目的論」と言います。アドラー心理学は、未来志向の目的論の心理学です。人が「何かしよう」と決意するときは、未来に向けての意思が働いています。意思は、現在と未来の懸け橋となり、未来は自分の意思で主体的につくっていけます。取り戻せない過去の原因にこだわるより、自分で変えられる未来を目指していきます。

③全体論-人は心も身体も結びついたたった一つの存在

全体論とは、「人は、心の中が矛盾対立する生き物ではなく、一人ひとりかけがえのない、分割不能な存在である」と捉える考え方のことです。私たちはよく「わかっているけどやめられない」と言いますが、これは「やめられない」のではなく、「やめたくない」のです。理論と感情、意識と無意識は繋がっていて、「できない」のではなく、「しない」だけです。心と身体も繋がっています。どちらも合わせ、全体論で捉えると、「〇〇だから仕方がない」という言い訳は成り立ちません。人は変わろうと思えばいくらでも変われるのです。

④認知論-誰もが自分だけのメガネを通してモノを見ている

認知論は、「人間は自分流の主観的な意味づけを通してしか物事を把握できない」という考え方です。人は事実をありのままに客観的に把握することは不可能です。人は、同じ出来事を体験しても、感じ方や受け止め方はそれぞれ異なります。
アドラー心理学では、ある人のことを知ろうとするときに、その人に何が起きているかという事実よりも、その人が出来事をどのように受け止めているかを重視するよう伝えています。

⑤対人間関係論-すべての行動には相手役がいる

アドラー心理学では、人の行動・感情には相手が存在するとみなしています。相手の行動に影響を受け、それに対して人はある感情、ある行動を返します。さらに相手もまた行動を示します。このように、人はお互いに影響を与え合う関係の中で生きています。ある人を理解したいときは、その人の対人関係のパターンを観察するとわかりやすいです。

「勇気づけ」とは

アドラー心理学は「勇気づけの心理学」とも言われています。勇気づけとは、「困難を克服する活力を与えること」です。勇気に重要な要素は次の3つあります。

①リスクを引き受ける力

人生のリスクに直面したとき、勇気のある人は思い切ってチャレンジすることができ、成長に繋がります

②困難を克服する努力

勇気のある人は、「困難は克服できない障害ではなく、それに立ち向かい、克服できる」という意識を持っているので、困難を味方につけることができます。

③協力できる能力の一部

一人よがりや競争心いっぱいで行動することはありません。勇気のある人は、目標にむけてメンバーの力を合わせる能力、自ら貢献する能力を持ち合わせています。

勇気のある人とない人の違い 勇気のある人とない人の違い
勇気づける人と勇気をくじく人の違い勇気づける人と勇気をくじく人の違い 

「共同体感覚」とは

共同体感覚は、家族・地域・職場などの中で「自分はその一員なんだ」という感覚を持っている状態のことです。共同体感覚を持っている人は、関わる人たちと尊敬し合い、積極的に「貢献しよう」「協力しよう」という意識で動くことができます。
さらに、自分を理解し、長所も短所も欠点も含めた、ありのままの自分を受け入れることができ、このことを「自己受容」と言います。

自分の思い込みをストップしよう-認知論とベイシック・ミステイクス

私たちは、自分流の主観的な意味づけを通して、物事を把握します(認知論)。そして、自分自身や世界(人生・他者など)に対するその人特有のものの見方・考え方・価値観のことを「私的論理(プライベート・ロジック)」と言います。私的論理は、その人特有のメガネのようなものです。
私的論理の中でも、特にゆがんだ発想をして、自分自身も生きにくく、周囲の人との間で摩擦を起こしてしまうような考え方を「ベイシック・ミステイクス(基本的な誤り)」と呼び、次の5種類があります。

決めつけ:可能性にすぎないものを自分で勝手に決めつけてしまうこと
誇張:物事を拡大して大げさに捉えてしまうこと
見落とし:ある部分だけを切り取って、大事な側面を見落とすこと
過度の一般化:何か一部うまくいかないことがあると、別のこともうまくいかないと思い込むこと
誤った価値観:自分が無価値で、「自分には生きる価値がない」と自滅的に捉えること

ゆがんだ思い込みから抜け出すための3つの方法

ゆがんだ思い込みに陥ったとき、そこから脱却するための方法が3つあります。自分や周りにとって健全かつ建設的で、現実に即した考え方をもつことを「コモンセンス(共通感覚)」と呼びます。

①「本当にそうなの?」と疑う
②「あっ、またやってしまったな」と自覚する
③「こうすればどうだろう?」と建設的に考える

仕事に生かすアドラー心理学

①人を動かす動機づけの方法

相手を動機づけるときには「外発的動機つけ」と「内発的動機づけ」の2つがあります。真の意味で相手を動かすには、内発的動機づけが効果的です。それぞれを解説します。

「外発的動機づけ」
相手に対して、金銭的なごほうび、昇進・昇格などの機会を与えたり、その逆をする行動です。賞罰のようなアメとムチでの操作で、相手の行動をコントロールしようとする方法です。相手は「自分は統制されている」と思い、周囲との人間関係が競争的・敵対的になり、ギスギスしてしまう可能性があります。

「内発的動機づけ」
自分で自分をやる気にさせる方法です。自分自身で達成・成長・有能さを感じ取り、夢中になって行動することができます。周囲との人間関係があたたかく、協力的になります。

②相手を説得する方法

相手を説得したいときに、突然自分の言いたいことを畳みかけるのは逆効果です。説得するときには共感が必須です。自分の知りたいことや興味を抑えて、「相手の関心に注目する→相手の事情をしっかり聴きとる→その後にこちらの言いたいことに相手を導く」のステップで話しましょう。

③職場で注意するときのポイント

指摘は「行為」に留め、人格面は否定しない
行ってしまった行為であれば、本人が自覚して努力することで修正できますが、人格を否定しても簡単には変えることはできません。

「なぜ?」と原因追及をせず、相手がそうしようとした目的を質問する
「なぜ?」と追及されても相手は答えられません。どのような目的・意図があったのかを訪ねましょう。再発防止にもなります。

「私」メッセージを使う
人は注意するときに「あなたという人は…」と「You」を守護にして攻撃的な言い方になりがちです。「I(私)」を主語にして伝えることで。こちらの気持ちが相手に伝わりやすくなります。


「仕事やプライベートでの人間関係がうまくいかない」「もっと自分に自信を持ちたい」「折れない心をつくりたい」など、対人関係や自分自身に関する悩みを解決したい場合は、アドラー心理学を学びましょう。自分自身の耐性力を強化したり、相手とどのように関わっていくといいのかなどを知ることができます。アドラー心理学は、私たちが自分の人生を自らの力で切り開く大きな助けとなります。研修導入をご検討の方はお問い合わせください。


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