オンラインコミュニケーションの課題と質を高める方法とは?

オンラインコミュニケーションの課題と質を高める方法とは?

目次

2020年の新型コロナウイルスの大流行をきっかけに、ZoomやTeamsなどのオンラインツールを使ったオンラインコミュニケーションが急速に普及しました。しかし、「まだ使いこなせていない人も多い」「オンラインだとうまく伝わらない」「オンライン上でどうやって人間関係を築いたらいいのかわからない」「文字でのコミュニケーションが増え、相手との意思疎通ですれ違いが起こる」といった悩みをよく耳にします。オンラインコミュニケーションは便利な反面、相手の感情がわかりにくい、細かなニュアンスが伝わりづらいなどのマイナス面もあります。
オンラインコミュニケーション協会の調査では、「約8割の企業が新型コロナ収束後にも、テレワークを継続、またはさらに拡大していく方針」と答えていますので、「オフィスでも、家でも、それ以外の場所でも仕事をする」ハイブリッドスタイルは継続する予想されます。
つまり、これからの時代には、ITスキルや英会話などと同じように、1つのビジネススキルとして、オンライン会議や商談におけるコミュニケーション力を強化していく必要があるのです。

本コラムでは、拙著『直接会わなくても最高の成果が出る オンラインコミュニケーションの教科書』から、300社以上、1万人以上のビジネスパーソンと画面越しのコミュニケーションを重ねるなかから見えてきた、オンラインコミュニケーションのコツについてお伝えしていきます。研修導入をご検討の方もぜひお読みください。

オンラインコミュニケーションとは

オンラインコミュニケーションは、インターネットを介した非体面のコミュニケーションのこと。
テレワークの普及により、オンラインでのコミュニケーションが急激に広まりました。
オンラインコミュニケーションは、
①メールやチャットなどの「テキストコミュニケーション」
②電話や通話アプリを使った「ボイスコミュニケーション」
③ZoomやTeamsなどオンライン会議ツールを使用した「ビデオコミュニケーション」

の3つに分けられます。それぞれの特徴を知り、使い分けることで、遠隔地でのコミュニケーションが円滑に進みやすくなります。

オンラインコミュニケーションにおける課題

(1)「空気感」が伝わりにくい

オンラインでは、カメラとマイクがとらえる範囲の音声と映像しか伝わりません。同じ空間にいるなら当然感じられる、「匂い」や「気配」なども共有できません。

(2)言いたいことが伝わりにくい

オンラインでは「目配せ」もできないわけですから、日本人が得意とする「察する」ことが難しくなるのです。日本は察しの文化なので、すべてをはっきりと言葉にすることがありません。オンラインだと、まさにその「察してほしい部分」が伝わりにくくなってしまうため、自分の言いたいことが伝わらないとか、相手の言っていることが理解できないといった、コミュニケーションエラーが多発してしまいます。
オンラインコミュニケーションの特徴を理解しないまま使っていると、
「オンラインだとちゃんと伝わらない」
「対面に比べて疲れる」
「直接会ったことがない人と、どう人間関係を築けばいいかわからない」
「商談がオンライン中心になったとたん、成約率が劇的に下がった」
などとコミュニケーションエラーが起こります。対面とオンラインではコミュニケーションの取り方がまったく違うため、現代のビジネスパーソンにはオンラインコミュニケーションの特徴を理解し、生産性の高いコミュニケーション術を身につけることが求められているのです。

信頼関係を高めるオンラインコミュニケーションのコツ

「入社してから一度も出社していないので、上司や先輩と対面で話したことがない」「新規のお客さまと直接お会いする機会が一度もない」という人も多いのではないでしょうか。 もしかしたら、「オンラインだけでは、深い人間関係を築くことはできない」と思っている人もいるかもしれませんが、ポイントさえ押さえれば、オンラインでも十分に信頼関係を築いたり、親睦を深めたりすることはできます。
たまにしか会えない会社のメンバー、一度も対面で顔を合わせたことがないお客さまなどと距離を縮める方法、そして信頼を獲得する方法についてお伝えします。

(1)オンラインでの人間関係構築は、まず挨拶からはじめよう

あいさつの「挨」には、相手の心を開くという意味があり、「拶」 には、相手の心に近づくという意味があります。つまり挨拶とは、自分の心を開くことで相手の心を開かせ、相手の心に近づいていく積極的な行為なのです。オンライン上でどれだけ気持ちのいい挨拶を交わせるかが、関係性を築く最初の一歩です。
特にオンライン会議では、最初のテンションが低いと、その状態のまま本題に進んでしまいます。最初の挨拶のときだけでも、テンションを上げ、明るくハキハキとした印象をほかの参加者に与えると、その後の議論も活発になります。
お手本にしたいのは、YouTuberです。彼らは動画が始まるとき、「はい、こんにちは~!」と勢いよく挨拶をします。元気のいい挨拶は、それだけで相手の興味をひきますし、挨拶された側もなんだかいい気持ちがするものです。
オンライン会議室に入ったらまず「お疲れさまです」「こんにちは」「お久しぶりです」、社外の人なら「お世話になっています」などと挨拶し、そのときだけでもいいので、パソコンのカメラを見るようにするといいでしょう。カメラ目線をすると画面上の人たちと目が合っているように感じるからです。話が始まって画面を見るようになると、目線が合わず相手と目が合うことが減ってしまいますので、挨拶のときだけでもカメラを見て、視線を合わせて挨拶をするように心がけましょう。

(2)オンラインコミュニケーションを円滑にする気遣いのコツ

オンライン上でいい人間関係を築くためには、ちょっとした伝え方の工夫、気遣いが必要です。リアルと同じ方法でコミュニケーションをとってしまうと、物理的な距離があるぶん、誤解や行き違いが発生する可能性が高まるからです。オンラインコミュニケーションにおける気遣いのコツを5つお伝えします。

①断るときは代案を添える
人から何かを頼まれて断る際、対面では「できません」と素っ気なく伝えても、その人の様子を見れば「ああ、今忙しいんだな」とわかります。しかし、オンライン上ではそれが伝わりません。「できません」の5文字だけだと、いい印象を残さないでしょう。オンライン上で依頼を断るときは、代案を添えると印象がだいぶ柔らかくなります。

②「差し支えなければ」で聞きにくいことを聞く
ストレートに質問すると、高圧的な印象を与えかねません。そんなときに便利なのが、「差し支えなければ」というひと言。「差し支えなければ教えていただけますか」というように質問すると、相手は「嫌なら答えなくていいんだ」ということがわかります。

③「わからないことがあったらなんでも聞いて」は不親切
新人や後輩に仕事を教えるときなど、先輩はよかれと思って、「なんでも聞いてね!」と言ってしまいがちです。「なんでも」という言葉は漠然としすぎているため、何を聞いていいかわからなくなる人がいるからです。何について質問していいのかが明確になる伝え方をしましょう。

④「ありがとうファースト」を習慣にする
オンライン上での会話は、感情共有がうまくいかないとギスギスした感じになりがちなので、「ありがとう」という癖をつけましょう。仮に少し耳が痛いことを言われたときでも、「ありがとうございます」で返すくらい、「ありがとうファースト」を習慣にすると悪い雰囲気にならずにすみます。

⑤あいまいな指示は避ける
たとえば、「ちょっといいですか」の「ちょっと」。「ちょっと」といっても人の感覚には個人差があります。「10分ほどいいですか?」というように、具体的に伝えるのがオンラインでの気遣いです。他にも、「〇日までに〇を回答してください」「〇〇さんに連絡してください」と、具体的に行動を示す言葉を必ずつけ足すようにしましょう。
相手が解釈した意図が自分の意図と違えば、大きなミスにもつながります。あいまいな指示、発言をせずにはっきりと言葉にして伝えるようにしたほうが、結果的にまわりの人から信頼されるのです。

(3)チャットはオンライン上での人間関係をよくする超便利ツール

オンライン上でいい人間関係を築くには、Slack、LINEワークス、Teams、WebExなどのチャットツールが役に立ちます。すでに社内でのやりとりに導入されている企業も多いでしょう。使い慣れていない人は、オフィスにいるときの立ち話にあたる会話から始めてみましょう。仕事の細かい確認や情報共有、雑談まで含むコミュニケーションをチャットで連絡し合うことで、会社のメンバーとのつながりを感じることができますし、次回リアルで対面したときも、自然にコミュニケーションをとることができます。

(4)チャットは絵文字を活用してこそ真の実力を発揮する

チャットを利用する際、ぜひ試してみてほしいことは絵文字の活用です。マイクロソフトOfficeのTeamsには、豊富な絵文字が揃っています。Officeは、ビジネスで使うことを前提としたツールなのに、なぜこんなに絵文字があるのでしょうか。
理由は、離れて仕事をしていると、メンバーの間で感情の共有が難しくなるからです。たとえば、「わかりました」というテキストだけでは、相手がどんな思いでこの6文字を打ったのかがわかりません。でも、「わかりました」の後にOKサインの絵文字が入っていたらどうでしょう。少なくとも、「怒ってない」「気分を害していない」ということが伝わります。ハートマークはビジネスにそぐわないこともあるので、「グッド」「ピース「拍手」などのハンドサインや、いろいろな顔の表情のマークから始めてください。

(5)時代は変わっても、電話が効果を発揮するシチュエーションはまだある

謝罪やお礼の気持ちを伝えたいときは、電話を使ったほうがいいでしょう。電話であれば、声色や間などによって、チャットでは表現しきれない感情が伝わるからです。絵文字で、「ありがとうございました」と言われるより、電話で「本当に助かりました。ありがとうございました」と言われたほうが、感謝の気持ちが伝わるのではないでしょうか。
「ごめんなさい」と「ありがとう」を言うことは、その人の誠実さを伝えることにつながりますし、相手と信頼関係を築けるチャンスでもあります。電話と聞くとアナログな印象を持ちますが、離れた人といい人間関係を築くためにはとても役立つツールです。
そのほか、オンライン会議が終わった後、自分の意見が通らなかった人や、反対意見を表明した人に歩み寄る際にも役立ちます。

生産性を高めるオンライン会議術

(1)アジェンダのない会議は参加者全員が不幸になる

「アジェンダ」とは、会議の「目次」のようなものです。議題や担当者、所要時間が5〜10分刻みで入っている進行予定表ともいえます。
とくにオンライン会議は、一度話が脱線してしまうと、元に戻すのが難しいため、アジェンダが非常に重要です。話が脱線して、本来話すべきことに時間を割くことができなかった場合、オフィスにいるときであれば、会議後に廊下やエレベーターホールなどで出席者をつかまえて、「先ほどの件、確認していいですか?」とすぐに聞くことができましたが、離れて仕事をしていると、このようなことは気軽にできません。オンライン会議では、聞きたいこと、話したいことをスキップされないよう、最初からアジェンダに組み込んでおくことが重要なのです。
そしてもう1つ、アジェンダの大事な役割は時間管理です。人は、締め切りが決まっていないと、ついダラダラと話してしまいがちです。よくある「会議が長引く」という問題は、おそらくこれがいちばん大きな原因でしょう。会議の前日までにメールやチャットで参加者全員に送り、会議で話し合いたいことを事前に共有することがスムーズに会議を進めるコツです。

(2)オンライン会議の「沈黙」は、名前を呼ぶだけでなくせる

会議の場では、ファシリテーターやプレゼンターが主導権を握り、みんなからの意見を平等に聞き出しながら議論を進行させますが、オンライン会議では、リアルの会議以上にこの役割が重要になります。1つめは、「名指しで発言を促すこと」、2つめは「話の長い人は後まわしにすること」の2点を意識するとうまく進行することができます。
オンライン会議中に、ファシリテーターが「何か意見はありますか?」と問いかけて、「シーン」となってしまったという経験はないでしょうか。参加者が目で合図したりできないことや、自分の発言とほかの人の発言が重なることを避けたがるため、発言をためらう傾向があります。心理学の世界では「ネームコーリング効果」と呼ばれているのですが、相手に名前を呼ばれると、自分の存在を認められたという意識が醸成され、集中力が高まるという効果もあります。

(3)会議の効率は、誰から話を振るかで決まる

オンライン会議のテンポやスピード感は、最初に誰に話を振るかでほぼ決まります。
各議題の冒頭では、話の要点をコンパクトにまとめられる人から話してもらうこととよいでしょう。アジェンダで時間配分を決めておくことが前提ですが、話の長そうな人をあらかじめリストアップしておき、そういった人には最後に話を振るよう意識しましょう。

(4)話の脱線を防ぐ「パーキングロット」

リアルの会議に比べ、オンライン会議では、話の長い人を制止しにくかったり、話が散らかりやすかったりするので、「パーキングロット」を使いましょう。
パーキングロットとは、「駐車場」という意味で、一時的に車を停めるように、後で話し合うべき話題をまとめて置いておく場所、というイメージです。
議題と異なる話題が出たときに、全員の前でパーキングロットに入れたことで、「後で必ずこの話題について話し合いますよ」と約束したことにもなるので、後まわしにされた人も安心です。アジェンダにパーキングロットを書き込めないときは、Zoom等のチャット欄を活用してもいいでしょう。パーキングロットやチャット欄にメモしたことで安心してしまうのではなく、必ず次回のアジェンダに書き入れましょう。

(5)カメラオフは、フルフェイスのヘルメットをかぶるのと同じ

あなたは、フルフェイスのヘルメットをかぶった人と普通に話すことができますか?「ちょっと怖い」という人が大半だと思います。オンライン会議中にカメラをオフにすることは、会議にフルフェイスのヘルメットをかぶったまま参加しているのと同じことです。相手の表情がまったく見えず、相手がどんなふうに自分の話を受け止めているのか、喜んでいるのか、悲しいのか、困っているのか、なんの手がかりもない状態に陥るので、伝えたいことがうまく伝わらなかったり、間違って伝わってしまったりと、ミスコミュニケーションの増加につながり、会議の生産性が著しく低下します。
ただし、最近は「リモハラ(リモート・ハラスメント)」という言葉もあるように、「何がなんでもオンにしなさい」と言うと、ハラスメントだと言われてしまう懸念もあります。相手もナーバスになっているかもしれませんから、無理強いは禁物です。ファシリテーター自身が誰よりも先にルームに入って、カメラをオンにしておき、会議室に入ってきた人から順に「 私のつたない話が伝わっているかどうか不安なので、よかったらカメラをオンにしてくれませんか」などと声をかけ、カメラをオンにしてもらうように促していくといいでしょう。

(6)会議前に雑談を促すといいアイデアが出る

リモートワークによって職場の人との雑談は減少しています。「雑談をすることで、ずいぶんたくさんの情報を交換していたんだな」「仕事の楽しさは、仲間と交わす雑談にあったのかもしれない」と実感した人も多いのではないでしょうか。オンライン会議の場は、離れて仕事をしている人たちにとって雑談ができる貴重なチャンスです。雑談なんて非効率的だと思うかもしれませんが、実は雑談のメリットはたくさんあります。
まず、オンライン会議が始まる前に雑談を交わすと、メンバー間の心理的安全性が確保されます。組織のなかで自分の考えや気持ちを、誰に対しても安心して発言できる状態のことです。「この場は私が発言してもいい場なんだな」と承認されることで、会議中の発言も増え、議論が活発になります。
会社やメンバーによっては、オンライン会議が始まる時間までみんなカメラもマイクもオフにしていてみんな無言。時間になったら急にスタートすることもあるようです。しかし、せっかく自分以外にも早めに入ってきたメンバーがいるのであれば、オンライン上で雑談することをおすすめします。

(7)オンラインならではの便利機能「チャット」を活用しよう

オンライン会議はいろいろな点でやりにくさを感じることもありますが、逆にリアルにはない便利な点もあります。その1つが、多くのオンライン会議システムに実装されている「チャット機能」です。音声による会話が主音声だとしたら、チャットでは、テレビの副音声のように、同時進行で関連する話をすることができます。
採決をとる際に口頭で賛成か反対かを聞く、わざわざ発言するほどでもない補足情報などは、「このリンク先に詳しく載っています」とURLを投稿する、忘れないうちに質問を投げかけるなど、チャットに入力することで、会議の進行を妨げることなく、発信できるので、便利です。


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