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リモートワークの急増により、お客様への訪問機会が減り、オンラインでの商談がメインになりました。対面でお会いできなくなったため、「コミュニケーションが取りにくい」「お客様の本音がわかりづらい」など営業活動で苦労している営業パーソンの声をよく耳にします。
商談のポイントは、まず心理的安全性を確保し、お客様の心の窓を開けることです。できるだけ窓が開かれた状態を維持し、全開になっているときにクロージングをする-。お客様の心の窓が閉じているときに、商品を売り込んでも商談は成立しません。
本コラムでは、拙著『スベらない商談力』から、信頼関係を構築し、「相手の心の窓を開く」ための実践的手法や、クロージングのテクニックを紹介します。研修導入をご検討の方もぜひお読みください。
お客様との信頼関係を構築する
(1)人の心には窓がある
私たちは、「なかなか心を開いてくれない」「あの人はオープンな人」などと、心に窓があって、その窓が開いたり、閉じたりしているかのような表現をします。人の心に窓があり、窓にブラインドがかかっている様子をイメージしてください。ブラインドが閉まっていれば、窓の外の景色は見えません。これは、相手に警戒感を持っている状態で、「心の窓が閉じている」と言います。一方で、ブラインドが開いていると、外の景色がよく見えます。この心の状態は、相手を信頼していて、「心の窓が開いている」と言えます。
コミュニケーションスキルの原則は、「心の窓を開く」こと。相手の心の窓を開け、その人が何を考え、何を感じているのかがわかりようになりましょう。
(2)お客様の信頼を得るための土台は「正直・誠実な態度」
お客様から「信頼できる」という評価をいただくために、まずは「正直さ・誠実さ」がベースになります。これは、お客様に限らず、あらゆる人間関係で信頼関係を構築するための土台となります。
①嘘はつかない
②小さな約束こそきちんと守る
③公平さ-人によって言っていることや態度が変わらない
④挨拶をしっかりする
⑤言葉遣いは丁寧に
(3)商談では、お客様にたくさん話をしていただく
営業というと、自分が話すことが仕事のように思っている人がいますが、まずはしっかりとお客様の話を聞く営業パーソンの方が成約率が高い傾向があります。なぜなら、人は自分の話をよく聞いてくれた相手に心の窓を開くからです。ギブ・アンド・テイクの法則で、「話を聞いてもらったのだから、今度は相手の話を聞いてあげよう」という気持ちになります。
(4)買ってくれないお客様は将来の宝物
なかなか成約に繋がらないお客様を「どうせ買ってくれない」と思うか、「いつかは素晴らしいお客様になってくれる」と思うかで、将来の成約率が上がるかどうかが大きく異なります。「どうせ買ってくれない」と思っていたら、電話をするのも面倒になり、営業活動が雑になりがちです。しかし、「将来は素晴らしいお客様になる」と期待して、気を配っていると、成功のイメージを描くことができ、結果を残すという好循環が生まれます。
お客様を深く理解するヒアリングの7つのコツ
(1)話をどんどん引き出す-リード(誘導)のテクニック
初めて会うお客様は営業に対して、警戒心を抱いています。心を開いてもらうには、相手にどんどん話してもらう必要がありますが、ペラペラと話してくれる人はあまりいません。ここで活用できるのは、リード(誘導)のテクニックです。話題は何であっても構いません。お客様が何か話してくれたら、すからず「なるほど」「と言いますと?」「ああ、いいですね」「すごいですね」「ほう」「それで?」などと相槌をうって、話の続きを促します。
リードのテクニックの重要性は、相手を尊重し、受け入れていくところにあります。尊重され、受け入れられた相手は、話すほどにどんどん心の窓を開いていきます。
(2)目は口ほどにモノを言う-アイコンタクトのテクニック
コミュニケーションスキルというと、言葉だけに注意が向きがちですが、「目は口ほどにモノを言う」などと言われるとおり、アイコンタクトも重要です。契約を取ることばかりを考えていると、目つきは知らず知らずのうちに怖くなってしまいます。それでは、お客様は居心地がいいわけがありません。よそ見をしながら相槌を打たれて、相手が真剣に聞いていると思う人はいないでしょう。オンライン商談の場においても、なるべくカメラを意識して、話しましょう。
(3)沈黙は金-ポーズ(沈黙)のテクニック
沈黙すると、気まずくなって、自分から話し始める人が多いのではないでしょうか。沈黙には、相手に考える時間を与えたり、沈黙の前の言葉を強調したりするといった働きがあります。沈黙は、お客様にキーワードを語っていただくチャンスです。恐れずに、温かい眼差しでお客様の言葉を待ちましょう。
(4)相手の話をもっと深める-ミラーのテクニック
お客様に何でも話してもらうところから、営業が持っていきたい話題に話を切り替えたいときに有効なテクニックが、相手の話を鏡のように繰り返すミラーです。お客様が聞き出したいキーワードを語ってくれたら、すかさずその言葉を繰り返します。繰り返された言葉は強調され、お客様はその言葉について深く話してくれます。
(5)「他にないですか?」-話題を変えるテクニック
「そこが聞きたい」というキーワードが出てこない場合や、別の話題に切り替えたいときに活躍するのが、「他にないですか?」というフレーズです。ただし、相手の話を無視して、「他にないですか?」と聞いてしまうと、相手に失礼です。まずは相槌をうち、相手の話を認めた上で使いましょう。
(6)質問で相手の心を全開にする-心地いい質問と立ち入った質問
相手の話を十分に聞き、引き出し、話題を絞り込んだら、最後に質問します。立ち入った質問(相手が答えにくい、答えたくない)を行う前に、心地よい質問(相手が答えやすい、答えたい)を行い、親密感を増し、心の窓を開いてもらいます。質問をする際には、褒めることを合わせて行います。褒めるタイミングは、相手との信頼関係が構築できてからです。褒めるタイミングが早いと、不自然になってしまうので、注意しましょう。
(7)解釈のテクニック
最後に、お客様の話を正しく理解しているか確認します。人によって話の受け取り方が異なりますので、必ず解釈が合っているか質問しましょう。「私は話をこのように理解しました。間違いはないですか」と確認することで、ミスコミュニケーションを防ぎます。
お客様の利点にフォーカスする~「買いたい」と言っていただくプレゼンテーション&クロージング~
(1)お客様の「利点」にフォーカスし、アピールする
商品のプレゼンテーション時の最大のポイントは、お客様の「利点」にフォーカスした説明ができるかということ。利点とは、営業のアイデア(商品・サービス)がお客様にもたらす価値のことです。商品・サービスの特徴、競合他社との相違点、今までにお客様が使っていた商品・サービスとの違いなどの説明ももちろん大切ですが、お客様の購買動機に繋がることは「利点」です。そもそもの「目的」も利点の一つです。利点は複数ありますので、お客様のついての知識を深め、何にプライオリティを置いているかを把握しましょう。
(2)メリット・デメリットの伝え方
通常、競合他社との競争の中で営業活動を行います。圧倒的に他社よりも優位な条件で提案できることはあまりありません。自社を活用する際のメリット・デメリットをどのように伝えていくかが重要です。メリット-デメリット-メリットの順序で説明し、デメリットをメリットで挟み込むことで、デメリットの印象は薄らぎ、メリットの印象が際立ちます。
(3)「YES」と言っていただくためのクロージングの決めセリフ
遠慮してなかなかクロージングができない営業パーソンがいますが、クロージングをしなくては、いつまでたっても受注はいただけません。お客様が「YES」と言いやすいクロージングのテクニックを紹介します。
「注文を聞く」
ストレートに注文を聞く方法です。
営業「いくつ納品しましょうか?」
お客様「10つで入れて」
これで商談成立です。
「二者択一してもらう」
私たちは、選択肢が一つしかない場合、それを「買う」か「買わない」かのどちらかで考えますが、選択肢が二つあると、「どちらを買うか」を考えます。この習性を利用して、あらかじめAとBの二つのアイデアを用意しておきます。
営業「AとB のどちらがいいですか?」
お客様「どちらかといったら、Bにしようかな」
二者択一には、納品日や支払い方法を選んでいただくというパターンもあります。
「相手に答えてもらう」
「納品日はいつにしましょうか?」「お支払方法はいかがなさいますか?」などと、契約が実現した後に確認するような事項について、受注前に確認するテクニックです。お客様が答えてくだされば、契約が実現したという前提が成り立ちます。
「次の行動を述べる」
商談が成立した後にやるべきことを先に述べます。お客様が注文しようか決めかねているときに、「私は○△を行います。お客様は社内で△□をご確認いただけませんか?」など依頼します。
もちろん、値段が大幅に合わない、決定的な条件の違いがある場合などは、どんなにクロージングを行っても、受注に繋がりません。そのときは、どの条件が合わなかったのかをお客様に必ず確認しましょう。次回の提案に生かすことができます。
オンライン商談でよくある「コミュニケーションが取りにくい」「お客様の本音がわかりづらい」などの課題を解決する心理的安全性を確保し、お客様の心の窓を開けるコツや、クロージングのテクニックをお伝えしました。商談成立のポイントは、お客様との信頼関係を構築し、お客様のニーズをヒアリングし、お客様の利点にフォーカスした提案を行うことです。研修導入をご検討の方はお問い合わせください。