持続的発展に不可欠なESGを全社浸透させる必要性とは?

持続的発展に不可欠なESGを全社浸透させる必要性とは?

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11月28日(火)に「持続的発展に不可欠なESGを全社浸透させる必要性とは?」と題した無料セミナーを開催しました。講師は、書籍『ESG投資で激変! 2030年 会社員の未来』(日経BP)の著者である、マーケットリバー代表取締役の市川祐子氏です。
当セミナーのテーマは、いま世界的に注目されているESGやサステナブル。環境問題や社会問題に取り組んだ経営方針を掲げている企業が増加しましたが、その方針が従業員一人ひとりに浸透し、自分事化して業務遂行できている企業は多くはありません。元楽天IR部長を務めた経験を持つ市川氏から、企業にESGが求められる理由、経営層だけではなく、会社全体に浸透させるメリットをお伝えしました。セミナーの内容の一部をご紹介します。

ESGはよく誤解されている?!

 まず、ESGのよくある誤解についてお伝えします。「利益を追求する投資家がESGを要求するのは倫理観が高まったから?」「わが社のビジネスは環境負荷が小さいからESGやらなくていい?時価総額が小さい/非上場だからESGやらなくていい?」「SDGsとESGは同じ考え方でいいんだよね?」「CSR部門とIR部門に任せておけばいい?」などご質問をいただくことがよくあります。すべて答えは「No」です。
ESGは、経済合理性の意図もあり、すべての会社の長期的な成長に必要なことであり、すべての部門に関係があります。SDGsは国連が主語、ESGは企業が主語になる施策です。

本日のセミナーは、以下の内容を抜粋しながら解説します。
・投資家はなぜESGを重視?~気候リスクは投資リスク~
・SDGsとESGは何が違う?
・気候変動だけじゃない株式市場が求めるESG情報
・人的資本開示:ESG投資が日本の働き方を変える
・ESG経営はパーパス経営

投資家はなぜESGを重視?~気候リスクは投資リスク~

気候変動に対して何も対策を行わなかった場合の損失は、世界各年のGDPの少なくとも5%です。一方で、気候変動の対策費用は、世界各年のGDPの1%程度なので、無策の場合の損失の方が大きく、気候問題は経済問題に影響することがわかります。
気候変動による経済的なリスクは以下のようなものがあります。
 ・感染症や熱中症の増加→医療費増加、労働力の減少
 ・水不足→飲料用水の不足、工業用水の不足・コスト増
 ・植生の変化→食糧生産減少、輸入コスト増
 ・海面上昇や豪雨増→堤防等の対策コスト増 など

気候変動対策、資源不足、人権・格差などの「経済・社会の長期課題」と、成長分野への資本投下、競争力強化などの「個々の企業の長期課題」の共有要素として、温暖化ガス削減、多様性、人材投資などのEGSの取り組みがあります。長期株主は、経済社会全体の持続的成長や、市場機能の健全性といったことに強い関心を持っているので、企業にはESG対策が求められるのです。

SDGsとESGは何が違う?

「SDGs」は国連が掲げた目標、「サステナブル」は企業が行う取り組み、「ESG投資」は投資家が見極め、評価・投資することと、3つすべて「主語」が異なります。
SDGsは、人類が持続的に開発を可能にするための目標であり、それを企業に規制強化・要請します。企業は、社会と持続的に共存し成長できるための取り組みを行い、投資家は持続的にリターンを得ることができるか企業を評価します。
SDGsの前身であるMDGsの取り組みから、途上国だけの問題ではない、政府や国際機関だけでは解けないといった課題が明確になりました。そこでSDGsでは、先進国を巻き込み、企業、金融機関、大学、研究機関、市民などすべての人が当事者になるべき取り組みとして掲げられました。

気候変動だけじゃない株式市場が求めるESG情報

会社の経営とは航海のようなもので、「企業=船」「社長=船長」「社員=乗組員」「外部株主=陸でじっと待つ船主」に例えることができます。陸で待つ船主(外部株主)が分け前を期待しているから、利益成長・株価上昇を重視し、IRで報告し、陸目線で経営するためのガバナンスを強化します。
投資家は、リスクを割引いた将来の純現金収支の総和を企業価値として計算し、常に「伸びているか」「儲かっているか」を基準に物事を考えていますので、「成長率を上げるものか」「割引率を下げるものか」という視点で企業価値向上に効くEGSであるかを重視しています。「成長率を加速するESG」とは、事業を通じて社会に貢献するもので、CO2削減に貢献する事業、人材投資・教育、雇用促進などがあります。そして、「割引率を下げるESG」は、地球温暖化ガスの削減、有害物質廃棄物の削減など事業に伴うリスクを緩和するものです。
社会の持続可能性と企業の持続可能性が重なる部分がESG投資家の望むものであり、株主と社会の共通善であり、企業が優先して取り組むべき重要課題なのです。

人的資本開示:ESG投資が日本の働き方を変える

「日本企業の資本効率の低さの問題は突き詰めると“人と組織”」「人材の多様性の低さは事業リスク」「日本企業のESGは信じられない程遅れている」など、長期投資家は日本企業の「人」に問題があると指摘しています。日本の機関投資家も「投資・財務戦略で人材投資を重視すべき」と回答。しかし、現状の日本企業の人材投資は諸外国と比べて低く、日本の熱意あふれる社員はわずか6%です。
エンゲージメントスコア(ES)と営業利益率及び労働生産性に相関関係がある、人件費を1割増すと企業価値は13.8%向上する、女性社員比率が高いとROA(総資産利益率)が上昇するなど、人への投資が企業価値を上げることがデータで実証されています。
さらに、2023年6月の有価証券報告書から、従業員の状況やサステナビリティに関する考え方や取り組みの記載が追加になりましたので、企業には戦略・課題と整合する人材指標を示すことが求められているのです。

ESG経営はパーパス経営

エンゲージメントも価値創造プロセスも核は「Why」です。なぜこの事業をはじめたのか、その理念(パーパス)をつくり、そのパーパスを中心に価値創造を行っています。パーパスを全社に浸透させ、戦略実行まで一気通貫できる企業は持続可能です。個人のパーパスを考えさせる企業も増加しています。会社と個人のパーパスが一致すると、生産性の向上にもつながりますので、パーパス経営を目指してください。

  • 「環境リスク=投資リスク」「ESはGありき」という話が印象に残った。
  • 社員の口コミが2~3年後の企業価値につながっている。
  • エンゲージメントと、利益の関係性。新入社員教育に関して、もっとSDGsやESGの教育時間やコンテンツを拡充して、さらには自社の事業の話と強く結びつけて学ばせる必要性を感じる。
  • 企業規模の大小は問わずESGは必要になってくる。
  • ありがとうございました。経済価値創出と社会課題解決実現の両立は「言うは易し、行うは…」の典型的なものだと感じています。但し、一方で、機関投資家・労働市場等における関心度は益々高まっており、「目を背けている企業は生き残れない」事に危機感を持たないといけないと改めて感じた次第です。
  • 講師の市川さんの説明がわかりやすかったです。ありがとうございました。
  • 自律・自走出来る人材をどう育成していくべきか⇒My MVVづくりをまず起点として取組み中です。
  • やはり、何を目的にどうなりたいのかのストーリーが必要だと改めて思いました。
  • 他社事例などもあり、大変わかりやすかったです。
  • 「経済なき道徳は寝言である」という言葉が心に残った。
  • 経済なき道徳は寝言、道徳なき経済は犯罪。
  • 市川さまのご講演は初めて伺いましたが、非常に分かりやすい資料に分かりやすい言葉でご説明頂き、大変勉強になりました。
  • 世の中の流れやサプライチェーンや投資家からのESGに対する要請は外圧的なものとして理解するものの、会社の経営層がだからESGをやるぞってところまで至っていない。我が事とすると講師も言っていたがESGに対する内発的なモチベーションに対してどうしたらいいのかを教えていただきたい。

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