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「暗黙知」を活かして組織力を強化する3つのポイント~ミドルシニア社員の勘、技、コツを無駄にしない~

「暗黙知」を活かして組織力を強化する3つのポイント~ミドルシニア社員の勘、技、コツを無駄にしない~

目次

2024年10月、小社刊『55歳からのリアルな働き方』著者の田原祐子氏によるアーカイブセミナーを開催しました。
本セミナーでは、人材の持つ経験知やナレッジを活用して、社内人材育成・ミドルシニアのセカンドキャリア支援に活用する方法などを解説しています。以下にセミナー内容の一部をご紹介します。

パート1 田原祐子氏による講義

当セミナーでは、ミドルシニアの持つ貴重な経験知を、新たなキャリアに活用するポイントを以下3つの視点からお話ししてまいります。

・多くのミドルシニア層が、セカンドキャリアや役職定年等、その先の準備ができていない!
・あなた(ミドルシニア社員)の持つ経験知を可視化する3つのポイント
・ありたい自身の(姿)をキャリアの4象限から選択する

1.ミドルシニアの実態とその課題

経験知:Business Wisdom(仕事の知恵) 単なる知識ではなく、長年の仕事や経験を通じて培った加工された知識のことで、経験を重ねるごとに進化していくもの

暗黙知:個人の経験や直感を通じて獲得された主観的な知識=ノウハウ・経験・勘・技・コツなどの、Knowledge(ナレッジ・実践知)

ミドルシニアに関する調査によれば、多くの方々が、セカンドキャリアや役職定年等その先の準備ができていないというのが実態です。準備のためには、まず、ご自身の「経験知」(知識・スキル・コンピテンシー)の見える化が必要です。

また、企業内人材育成の約80%はOJTによって実施されていますが、肝心の仕事のコツや暗黙知はOJTでは伝わらないという実態も、あきらかにされています。

人材育成・人的資本経営の観点から鑑み、いかに「現場の経験からなる上司の経験知・暗黙知」「知識・スキル・コンピテンシー」を、部下に伝え人材育成につなげられるかということが、多くの企業にとって、重要な課題なのです

『ライフシフト100年時代の人生戦略』リンダ・グラットン/アンドリュー・スコット著(東洋経済新報社)の中では「無形資産=仕事に役立つ知識・スキル」は、次なる有形資産(キャリア・報酬等)の形成のためにも重要であると解説しています。

このように、「経験知」には価値があることを認識することが重要なのです。

2.経験知を可視化するポイント

経験知とは、Business Wisdom(仕事の知恵)です。
単なる知識ではなく、長年の仕事や経験を通じて培った、加工された知識を指します。
たとえば、

・長年蓄積してきた成功例、失敗例
・経験や学びから得た知識や知恵(経験知・暗黙知)
・突発的なことが起こったときの対応力、判断力
・経験から導き出される様々な仮説、予見、ポイントの見立て
・交渉力、洞察力など

これらの経験知は、若手にはない“宝物”です。しかし、実際は多くの方々が自分の暗黙知に気づいていません。

経験知は、主に3つの領域に分類できます。

① 専門分野 =知識、領域
② 実践スキル=実務経験
③ コンピテンシー=行動特性・人間性

これらは、
「あなたはどのような仕事を経験してきましたか?」
「あなたは具体的に「何を」×「どのように」してきましたか?」
「あなたが仕事をする際、心がけていることはありますか?」
といった質問に回答していくことで、言語化され形式知化されていきます。

経験知を可視化するメリット

・人材育成・組織開発に活用できる
・ミドルシニアにとっては、見える化した経験知から、ご自身でも気づかないような未来のキャリアが拓く

ミドルシニア層の本人にとっても、社内の新しいポジション・セカンドキャリアに活かすことができ、企業にとっては、次世代育成やコミュニケーション活性化などのメリットにつながります。

KW (Knowledge&Wisdom)リストの作成

K :Knowledge … ナレッジ(知識)
W :Wisdom … 叡智(知恵)
KWリストは、ミドルシニアの経験知を社内で教えられるようにするための、ナレッジ見える化ツールです。単なる業務プロセスだけでなく、思考プロセス、すなわち「どのように考え、何を判断してそれを行ったか」を書き出し棚卸しすることで、ミドルシニアが長年の現場経験で培った判断のポイントや自身の経験知の強みがわかります。

3.ありたい自身の(姿)をキャリアの4象限から選択する

自分の強みはこれまで手掛けてきた「〇〇という業務や肩書」ではなく、その業務で経験してきた知識・スキル・コンピテンシーという3つの要素にあります。
これら3要素を自在に組み合わせて「キャリアを展開する領域」を定めていきます。
次の「4つのパターン」から、新たなキャリアを展開する領域や新たな可能性について、考えます。

①キャリアアップ 同業種×同職種
②キャリアシフト  同業種×異職種
③キャリアチェンジ 異業種×同職種
④キャリア・チャレンジ 異業種×異職種

ミドルシニアのキャリア戦略

特に大切なポイントは、これまでに経験した仕事を構成している知識やスキルをこのように分解し抽象化することで、過去には経験のない社内の分野・部門、社外では他業界でも力を発揮できる可能性があることを、理解していただくことです。このように、業種と職種をかけあわせて、ご自身の可能性を拓いていきます。

パート2 ディスカッション(研修効果・事例紹介)

講師:田原祐子氏 
ファシリテーター:株式会社かんき出版 山縣道夫

4.実際にどのようなお悩みを受けて本研修を実施するのか?

山縣―実際に企業からどのような課題を受けていますか?

田原氏―一番多いのは、ミドルシニア社員の経験知や暗黙知をどのように活用し、組織全体に共有するかというご相談です。特に、役職定年を控えた方々や、技術職のベテラン社員が持つ知識を、次世代にどう引き継ぐかが重要な課題になっています。

山縣―経験知や暗黙知は具体的にどのように可視化するのでしょうか?

田原氏―まず、知識・スキル・コンピテンシーの3つに分解します。それぞれをシートに記載し、社員自身に棚卸しをしてもらうプロセスを踏みます。また、ワークショップでは、社員同士で意見交換を行い、具体的な業務を行う上での思考プロセスや判断軸を共有してもらいます。

5.研修実施後の受講者の変化をいくつか紹介

山縣―受講者にはどのような変化が見られましたか?

田原氏―あるミドルシニア社員の方は、自分のスキルや知識を棚卸しする中で、「自分が思っていた以上に多くの価値を提供している」と気づかれました。その結果、自信を持ち、若手への指導に積極的になり、チーム全体が活性化しました。また、部下からの信頼も向上し、職場全体の雰囲気が変わったという報告もあります。

山縣―他にも特に印象的な事例はありますか?

田原氏―人事部の方が主体となり、この手法を全社規模に広げた事例があります。最初は小さな取り組みでしたが、暗黙知の可視化を通じて全社的なイノベーションが生まれ、新規事業の立ち上げにまでつながりました。こうした成功事例を見ると、やはり暗黙知の重要性を実感します。

山縣―研修導入を考えている企業に向けて、何かアドバイスはありますか?

田原氏―まずは小さなスケールで始めてみることをお勧めします。例えば、人事部門で試験的に実施し、その効果を他の部門へ展開する形が効果的です。また、一部門だけでなく、全社的に取り組み継続的に行うことで、新たなイノベーションが生まれる可能性も高まります。

山縣本日は貴重なお話をありがとうございました。

6.受講者の声

・「職種×業種」の軸でキャリアを整理する方法が非常に参考になりました。
・ベテラン層が持つ暗黙知を形式知化するプロセスが組織の成長にもつながるという点に共感しました。
・暗黙知を形式知化するためのシートを活用し、項目ごとに言語化する方法が実践的でした。
・紹介された手法は、課題解決の糸口になりそうです。

以上、ミドルシニア・シニア層の経験を活かした組織開発のヒントとなりましたら幸いです。

研修導入のご相談や、本セミナーの視聴を希望されるご担当者様は、以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
https://edu.kanki-pub.co.jp/contact

田原祐子講師の研修プログラム「暗黙知見える化プログラム
https://edu.kanki-pub.co.jp/training/181

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