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かんき出版は、日本の人事部主催「HRカンファレンス2023-春-」に協賛。一般社団法人 オンラインコミュニケーション協会 代表理事の初谷 純氏を講師にむかえ、「顔が見えないオンライン会議が組織にもたらす危険性~エンゲージメント低下、生産性悪化の原因を探る~」と題した特別講演を行いました。当日の講演でお伝えした内容の一部を報告します。
オンライン会議の現状
まずみなさんに質問です。対面とオンライン、どちらの会議が難しいですか?「オンラインの方が難しい」と回答している方が多く、その次に「対面・オンラインの両方とも難しい」という回答が続きますね。他のセミナーでお伺いしても、今回と同様に「オンライン会議が難しい」と答える人が圧倒的です。
難しいからといって、オンライン会議をなくす企業が少ないようで、当協会での調査データによると、「約8割の企業がリモートワークを継続する方針である」ことが分かっています。
ところでみなさんの組織では、会議のときにビデオON/OFFのどちらが主流でしょうか。ビデオをOFFにして会議をしている会社も多いようですが、ビデオOFFの会議というのは、対面での会議にフルフェイスのヘルメットをつけて参加しているのと同じようなことです。このような方がいたら、会議はスムーズに進行するでしょうか?
特に日本では、「顔色をうかがう」「目で合図する」「空気をよむ」「察する」という文化もあるので、顔が見えないと余計に不安を感じる傾向があります。
ビデオONとOFFの違い-研究結果の発表
そこで私たちは、武蔵野大学 経営学部 経営学科の宍戸拓人先生と共同で、オンラインコミュニケーションにおけるビデオONとビデオOFFの影響を検証しました。ビデオONとビデオOFFのチームをそれぞれ7チームつくりました。性別、年齢、コミュニケーションスタイルが混合になるようにチームメンバーを振り分け、コンセンサスゲームに取り組んでもらい、ビデオON/OFFで違いがでるか研究を行いました。
ビデオOFFのチームでは、メンバーの多様性を原因とする意見対立を避けるようになり、合意まで時間がかかり、その結果、意思決定の質が悪化するという結論が得られました。
この研究結果から、
・多様性が生み出す対立をイノベーションにつなげるためには、意見の内容だけではなく、表情や仕草といった非言語情報を最大限活用する必要がある
・ビデオOFFでは、声のみを頼りに対立解消を進める必要が生じるため、対立に真正面から向き合わず、意思決定の質改善に貢献しないことへと時間が浪費される
・イノベーションを追求する組織においては、ビデオをONにすることは、プライバシー等の面でのコストやリスクを上回るだけの価値を持つ
・逆に、多様性や意見対立を軽視し、創造性発揮を目的としない組織であれば、ビデオをOFFにしても問題は生じない
ということが導き出されました。
ビデオOFFで会議をすることがデフォルト状態にある組織は、テクノロジーがもたらす効率化の恩恵や、多様性がもたらすメリットを受けず、波風立てず、ほぼ決まった結論について、話し合っているフリをしていることが常態化している組織である可能性があります。
ビデオOFF文化の組織に忍び寄る最悪のシナリオ
ビデオOFFが常態化していると、アイデア出しの会議なのに、他の参加者と異なる意見を言いづらくなり、斬新なアイデアや新しい考えが出なかったり、意思決定会議で、上辺だけの合意や、本心ではない決定事項に従わざる得ないメンバーが多くなり、リスク拡大、チャンス減少に繋がってしまうなどの恐れがあります。
「業務時間の約25%が会議の時間」とも言われているくらい、仕事の時間の多くの時間を費やす会議の運営をおろそかにしていると、5年後、10年後に大きなダメージが出ます。ダメな会議は“成人病”と同じなのです。今後の会社の成長のために、画面OFFを続けることによる弊害と、オンライン会議やテレワークのテクニックと併せて、社員に伝えることをおすすめします。
- テンポよく、聞きやすかったです。ありがとうございました。
- 日頃私が感じていたことが、研究結果として立証できたので、安心しました。今回はONの良点にフォーカスされていたかと思いますが、OFFの良点もあるかと思っており、使い分けの進めや混合した運用の浸透方法などより詳しい内容を伺いたいなと感じました。
- とても聞きやすく、コンパクトなご説明でした ありがとうございます。
- 分かりやすいご説明でビデオOFFが与えうる悪影響を改めて認識することができました。
- トップダウンでおろしていくというより、本質や大事にしたいことを伝えて、各現場での工夫を横展開していきたいと思ってます。お話ありがとうございました。
- ビデオオンとオフで言いたいことが言える言えない、結果会議の充実度が異なってくるという話が印象深かった。
- ビデオOFFはフルフェイスのヘルメットをつけて会議をしているようなものという言葉が印象に残った。
- 若手でオンライン会議最中にカメラオフにする者が徐々に増えており、本日の講演をお伺いして根拠(事例)をもってその是非を議論することが可能になりました。
- 「言論の自由が確保されない」ということは、非常にフラストレーションがあるということ。ビデオOFFが、中長期的に影響が出て来るということが勉強になった。
- 印象に残った言葉は「ダメな会議は成人病と同じ」です。目先はうまく回っているように感じますが、じわりじわりと組織をむしばむことが一瞬で伝わりました。
- ビデオオフでの会議の弊害は、今すぐではなく数年後に影響するという点に危機感を感じました。
- オンライン会議やテレワークの実施テクニックと併せて伝えるのが効果ありという話が印象的。
- カメラOFFにすることがリスクになること。成人病という表現もなるほどと納得感がありました。今問題が大きくならなければ、対応しないという体質自体が問題であると感じています。
- ビデオOFFの会議がデフォルト状態である組織は「話し合ってるふり」。というのは本当にそうだと思います。しっかり議論したりダイアログしたり、1on1したり・・・。こういう会議はリアルで。という易きに流れず、メリハリつけて、オンラインでのコミュニケーションもしっかり取っていけるよう、そして関係の質の向上も並行しつつ進めていきたいと、お話を聞いてあらためて思いました。