新入社員の早期戦力化が加速するカギは「○△にあり!」

新入社員の早期戦力化が加速するカギは「○△にあり!」

目次

2024年5月29日に『新入社員の早期戦力化が加速するカギは「○△にあり!」』と題した人事・研修ご担当者向けのセミナーを開催しました。
多くの企業で新入社員を見てきた若手育成のプロの講師3名をお招きし、今ドキ新入社員の早期戦力化のポイントについてディスカッションしました。
セミナーの一部を抜粋・編集してご紹介します。内容は、講師3名の許可を得て掲載しております。

第一部:講演

講師:株式会社HRインスティテュート チーフコンサルタント 酒井瑛司氏

新入社員育成がなぜ重要か?

皆様も、新入社員の育成研修を実施する際には、組織力の強化、研修の実施、社会人へのマインドチェンジ、離職防止やミスマッチの防止など、何かしらの目的を持っているはずです。しかし、現在のビジネス環境は大きく変化しています。外部環境では、グローバル化や技術の進歩により、企業は多国籍な従業員を抱えるようになり、デジタル化も進展しています。また内部環境では、ジョブ型へのトレンドやリモートワークの普及などが見られます。
これらの変化に対応するためには、戦略的な方針を立て、人材のニーズとギャップを把握し、育成や研修を実施していく必要があります。しかし環境変化によりニーズが複雑化しており、育成施策を考える際には慎重になる必要があります。
企業の競争力を高めるためにも、環境変化を踏まえた戦略的な新入社員育成が必要になっています。

近年の新入社員の特徴をおさえる

近年では、毎年4月になると「配属ガチャ」という言葉をよく耳にします。
これは、入社前と入社後でのギャップが起こり、そのギャップに対処できないまま退職するケースが増えていることと考えています。チャンスがあれば転職したい若者も増えているようです。また新入社員が理想とする上司像も変わってきているようです。
コロナ禍により、働き方やコミュニケーションのスタイルが大きく変化しました。特にZ世代と呼ばれるデジタルネイティブ世代は、情報をインターネットやSNSから収集する傾向があります。
一方で、対面的なコミュニケーションの経験が不足しているため、ストレスを感じる場面も多いと考えています。
新入社員が抱える不安やニーズを理解し、適切なサポートを提供すること、そして個々の経験や価値観を尊重し、育成プログラムを柔軟にアップデートすることが大切なのではないでしょうか。

新入社員の早期戦力化のためにやるべきこと

近年の新入社員は、情報処理能力の高さや自己学習能力の強さが顕著になっています。
以前は、育成プログラムは主に社会人としての基礎スキルやマナーなどを教えることが中心でした。しかし近年の傾向を踏まえると、単なる型にはめ込むだけでは不十分です。新入社員には、自ら考えて試行錯誤し、経験を積む機会が必要です。
そこで今年から、新入社員研修プログラムを「守・破・離(修行の段階を表す言葉で武道の教え)」の「守」から「破」まで進化させる取り組みを行いました。
従来の型に沿った教育だけでなく、実際の現場シナリオを用意し新入社員が自ら考えて解決策を見つける環境を提供しています。こうした経験を通じて、新入社員が成功体験を得ることができます。人事、企業は、変化する環境とニーズに柔軟に対応し、より効果的な育成プログラムを提供していくことを目指すべきだと考えています。

第二部:パネルディスカッション
~2024年度新入社員を早期戦力化するには!?~

講師:株式会社HRインスティテュート チーフコンサルタント 酒井瑛司氏
   株式会社元氣応援団 代表取締役 団長 内村広樹氏
   あなたの心に火をつける!人材育成・コミュニケーション教育者 桑野麻衣氏
ファシリテーター:株式会社かんき出版 教育事業部部長 山縣道夫

山縣―まずは近年の研修で感じた新入社員の特徴についてお聞かせください。

内村氏―4月の研修で特に感じたのは、新入社員のデジタルリテラシーの高さです。zoom操作などの不明点や操作トラブルが起きた際にも積極的に補助してくれました。
また性格的な特徴としては、貢献心の強さが挙げられると思いました。誰かが困っているときに手助けしたい、という意欲がみえたり、協調性も高く、和を重んじる姿勢が顕著でした。
さらに、改善力が高いという印象も受けました。研修では、社会人としての姿勢や行動を身につけるために、ケーススタディや実践的なワークを多く取り入れています。初めは研修としての認識が薄かったかもしれませんが、フィードバックを受けてからは、その意識が変化し、2回目以降の取り組みには大きな成長が見られました。

桑野氏―一言で表すなら「枠からはみ出ない」です。SNSやメディアの普及により、個人の行動が即座に拡散される時代において、真面目で素直な姿勢であるなと。一方で、コミュニケーション不足やメンタル面の課題に直面することもあり、研修では自信や不安を克服し、キャリアを築くサポートが求められていると実感しています。
ただ、地域差、形態によっても若干異なる部分もあるかと思います。たとえば集合研修では慎重さや不安が目立って質問や発言が少なくなるなど。個々のメンタル面の課題や、他者との違いを隠そうとする傾向が背景にあるのではないかと考えています。状況に応じた対応もそうですし、個々のニーズに合わせたサポートが重要になるのではないかと改めて感じています。

山縣―今ドキ新入社員育成で押さえたいポイント、についてはいかがでしょうか。

内村氏―「強みにフォーカスし、その強みを伝えること」が重要であると感じます。講師陣や企画者からのフィードバックは、新入社員にとって大きな勇気づけになることを今年も改めて実感しました。
また、正解探しではなく、対話を中心としたアプローチが育成に効果的です。課題解決の経験が不足している新入社員に対して、研修現場での対話を通じて解決策を共有し、自己成長に繋げることが重要だとも感じています。

桑野氏―大きく二つのポイントを挙げたいと思います。
一つ目は「寄り添う育成」です。これは、新入社員に対して真の関心を持ち、彼らの強みや興味にフォーカスすることを指します。彼らとの対話を通じて、彼らの価値観や考え方を理解し、彼らを応援したいという気持ちを強くもつことが大切です。
二つ目は「大人(教える側)が輝いていること」です。若い世代は、多くの大人たちをメディアを通じて観察しており、冷静に判断する力を持っています。彼らは、輝く姿を見せる人に学びたいと考えています。教える私たちが心身ともに健康であり、ちゃんと輝いている姿を見せることが大切だと思います

山縣―ありがとうございます。寄り添うっていうのは本当に共感します。酒井さんどうでしょうか。

酒井氏―従来、研修はスキルや知識をインプットする場として捉えられてきましたが、経験から逆算して、どんな経験を通じて成長させたいかを考えることが重要です。
例えば「新入社員がメッセージを既読無視する」という最近よく耳にする課題があるとします。この場合、「返信してください」とただ伝えるのではなく、「あなたは上司です。部下に連絡をしたけど、既読がついてるけど、返事がありません。どう思いますか?どう感じますか?」というような問いを演習として仕立てるんです。そうすると上司の立場になって考え、さすがにこれはまずいな、という意見がどんどん気づきとして出てくるんです。このように演習を通じて行動の意味や影響について考える経験をさせることが重要です。

山縣―ありがとうございました。今日のお話を踏まえ、新入社員の早期戦力化のために、人事、職場がやるべきことは何だと思いますか?

酒井氏―「コンセプトの明確化」だと思います。ポイントは、現場のニーズや新入社員のニーズを踏まえて設計するということです。基本的な進行は従来通りであっても、コンセプト・軸を明確にすることで、育成や企画の方向性を見出しやすくなります。
そしてコンセプトの決定には、ブラッシュアップやアップデートが欠かせません。長期的に効果測定を行い、次年度の研修のコンセプトに生かしていくサイクルを確立することもまた重要です。

内村氏「ワンチームで研修を実施すること」そして強みにフォーカスを当てること」です。新入社員の方には無限の可能性があると信じて応援する。それが一番重要なんじゃないかなと強く思います。

桑野氏―最大の課題としては、"経験不足"です。新入社員に「経験をする」チャンスを与えること。それは成功経験とか失敗体験とかじゃなく「経験」です。とにかく色々な経験を一年目や研修中にさせてあげることが早期戦力化に直結すると思います。それに対して適切なフィードバックをすること、「役に立っているよ」とひと声かけるなど、人事・企業がフォローできることは沢山あります。それさえできていれば新入社員は大きく育っていけると実感しています。

山縣―本日はありがとうございました。

ご参加者の声

・後半のパネルディスカッションで桑野様がおっしゃていた、「講師である大人が輝いていること」というお言葉が印象に残っています。
・「配属ガチャ」という言葉や「他人とかかわるメリットがわからない」というお話が印象的でした。
・「まずは経験させる」ということが大事だと分かりました。
・24年度新入社員は「価値観が違う人とコミュニケーション取るメリットを感じていない」「コミュニケーションの取り方を知らない」という点が印象に残りました。
・今年感じていた新入社員の特徴が、弊社だけで感じているものではなく少し安心するとともに、やはり研修設計の見直しが必要だと再認識できました。

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