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2020年にパワハラ対策が義務化されて以降、多くの企業がハラスメント対策に取り組んできました。
しかし、「研修は実施しているものの形骸化している」「法改正に対応できているかわからない」といった課題を抱えている企業も少なくありません。
さらに、2026年にはカスタマーハラスメント(カスハラ)対策の義務化も予定されており、これまでの取り組みを見直す必要性が高まっています。
本記事では、義務化された・されるハラスメント対策の種類や具体的な対応策に加え、研修の効果を高めるポイントについて、年間960件以上の研修実績を持つかんき出版の社員研修が解説します。
義務化された・義務化されるハラスメント対策の種類
義務化されたハラスメント対策の種類は以下3つです。
- パワハラ
- マタハラ
- セクハラ
また、カスハラと就ハラは今後対策が義務化される予定となっています。
パワハラ
パワーハラスメント(パワハラ)とは、職場における優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により、労働者の就業環境を害することを指します。
パワハラ問題が顕在化したことを背景に2020年6月に大企業で、2022年4月には中小企業でも防止措置が義務化されました。
関連記事:ハラスメント研修の目的とは?受講者別のポイントやプログラム内容を紹介
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マタハラ
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠・出産・育児休業等を理由として、職場において労働者に対して行われる嫌がらせや不利益な取り扱いを指します。
具体的には、妊娠や出産を理由とした解雇や降格、育児休業の取得を申し出た従業員への嫌がらせ、「妊娠するなら辞めてほしい」といった発言などが該当します。
マタハラ問題への対応として、2017年1月から全ての企業に対して防止措置が義務化されました。また、男性の育児休業取得に対する嫌がらせは「パタニティハラスメント(パタハラ)」と呼ばれ、同様に防止措置の対象となっています。
セクハラ
セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場において行われる性的な言動により不利益を受けたり、性的な言動により就業環境が害されたりすることを指します。具体的には、性的な冗談やからかい、食事やデートへの執拗な誘い、身体への不必要な接触、性的な画像の掲示などが該当します。
また、異性間だけでなく同性間の言動や、性自認・性的指向に関する言動もセクハラの対象となります。セクハラ防止措置は、1999年4月から全ての企業に対して義務化されています。
カスハラ
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や取引先からの著しい迷惑行為を指します。
カスハラに該当する迷惑行為の例
- 土下座の強要
- 威圧的な言動
- 長時間にわたる拘束
- 不当な金品の要求
- SNSへの誹謗中傷
近年、サービス業を中心にカスハラ被害が深刻化しており、従業員のメンタルヘルス不調や離職につながるケースも増えています。こうした状況を受け、2025年6月に労働施策総合推進法が改正され、2026年10月から全ての企業に対してカスハラ防止措置が義務化されます。
就ハラ
就活ハラスメント(就ハラ)とは、採用活動において求職者に対して行われるセクシュアルハラスメントを指します。
就ハラに該当する言動例
- 面接官による性的な質問や発言
- 内定と引き換えに交際を迫る行為
- 採用に関する優越的な立場を利用した不適切な言動
OB・OG訪問やインターンシップの場におけるセクハラも対象となります。就ハラは、求職者が不利益を恐れて被害を訴えにくいという特性があり、問題が表面化しにくい傾向があります。こうした状況を受け、2025年6月の法改正により、企業に対して就ハラ防止措置が義務化される予定です。
ハラスメント対策は何をすればいいのか?
既に以下4つのハラスメント対策を実施している企業も多いかと思いますが、形骸化していないか改めて確認してみましょう。
- 方針の明確化と周知
- ハラスメント相談体制の整備・周知
- ハラスメント発生後の迅速かつ適切な対応
- 相談者・調査協力者のプライバシーの保護

方針の明確化と周知
ハラスメント対策として最初に取り組むべきことは、方針の明確化と周知・啓発です。企業としてハラスメントを許さないという姿勢を明確にし、就業規則や社内規程に具体的な方針を定める必要があります。方針にはハラスメントの定義や禁止事項、違反した場合の処分内容などを盛り込みます。
方針を策定したら、社内報や社内ポータルなどを通じて全従業員に周知することが重要です。経営層からのメッセージとして発信することで、組織全体でハラスメントを防止する意識を醸成できます。
ハラスメント相談体制の整備・周知
相談体制の整備も重要なハラスメント対策の一つです。従業員がハラスメントを受けた際や目撃した際に、安心して相談できる窓口を設置する必要があります。相談窓口は社内に設置する方法のほか、外部の専門機関に委託する方法もあります。社内窓口は相談のハードルが低い一方、外部窓口は匿名性が高く、より安心して相談できるというメリットがあります。
また、相談窓口を設置するだけでは十分ではありません。窓口の存在や利用方法を全従業員に周知し、いつでも気軽に相談できる環境を整えることが大切です。社内ポータルや定期的な研修などを通じて繰り返し周知することで、従業員の認知度を高めることができます。
ハラスメント発生後の迅速かつ適切な対応
ハラスメントに関する相談や苦情があった場合、企業は迅速かつ適切に対応しなければなりません。まず、相談者とハラスメントを行ったとされる人の双方から事実関係を確認し、必要に応じて第三者からも聞き取りを行い、客観的な事実を把握することが重要です。
調査の結果、ハラスメントが認められた場合は、就業規則に基づいて処分を行います。同時に、被害者に対しては配置転換やメンタルヘルスケアなどの適切なフォローを実施することも欠かせません。対応が遅れたり、不適切な対応をしたりすると、被害が拡大するだけでなく、企業の安全配慮義務違反を問われる可能性もあります。
相談者・調査協力者のプライバシーの保護
ハラスメント対策を講じる際には、相談者や行為者のプライバシーを保護することが不可欠です。相談内容や調査で得た情報は厳重に管理し、関係者以外に漏れないよう徹底しなければなりません。プライバシーが守られないと感じれば、被害者は相談をためらい、問題が潜在化してしまいます。
また、ハラスメントを相談したことや調査に協力したことを理由に、解雇や降格、配置転換などの不利益な取り扱いをしてはならないことを明確にする必要があります。これらの措置を就業規則や社内規程に明記し、全従業員に周知することで、安心して相談できる環境を整えることができます。
ハラスメント対策が形骸化してしまう理由
ハラスメント対策が形骸化してしまう理由として、まず研修が一度きりの実施で終わっていることが挙げられます。法令対応のために形式的に研修を行うだけでは、従業員の意識に定着せず、時間の経過とともに学んだ内容が忘れられてしまいます。
また、研修内容が知識や情報を伝えるだけの一方通行になっている場合、従業員は「自分には関係ない」と感じやすく、実際の行動変容につながりません。自社の職場環境や実際に起こりうる場面に即していない研修では、学んだ内容を日常業務でどう活かせばよいかがわからず、結果として形骸化してしまいます。
ハラスメント防止意識を高めるなら研修がおすすめ
ハラスメント対策の方針を策定し、相談体制を整備したとしても、従業員一人ひとりがハラスメントについて正しく理解していなければ、効果的な対策とは言えません。
研修を通じて、ハラスメントの定義や具体的な事例、被害者・加害者にならないための心構えを全従業員に伝えることで、職場全体の意識を高めることができます。また、研修は単なる知識の習得にとどまらず、日常のコミュニケーションを見直すきっかけにもなります。
「自分の言動が相手にどう受け取られるか」を考える習慣が身につけば、ハラスメントの未然防止につながります。組織全体でハラスメント防止意識を根付かせるためにも、研修の実施は欠かせない取り組みです。
ハラスメント研修の実施方法
ハラスメント研修の実施方法は以下3つです。
- 社内研修
- 社外研修
- eラーニング
社内研修
社内研修は、自社の人事部門や法務部門などが講師となって実施する方法です。自社の実情や過去に発生した事例に即した内容を盛り込めるため、従業員にとって身近で理解しやすい研修になります。
一方で、講師を務める担当者の負担が大きくなることや、専門的な知識が不足している場合には内容が偏ってしまう可能性があります。
社内研修を効果的に行うためには、最新の法改正や判例に関する情報を収集し、研修資料を定期的に更新することが重要です。
社外研修
社外研修は、外部の専門機関や研修会社に依頼して実施する方法です。ハラスメント問題に精通した専門家が講師を務めるため、最新の法改正や判例に基づいた正確な情報を従業員に伝えることができます。
一方で、社内研修と比較してコストがかかることや、パッケージ化された研修の場合、自社特有の事例を取り上げにくいことがあります。
そのため、自社の課題や実情にあわせて研修内容をカスタマイズしてくれる研修会社を選ぶのがおすすめです。
eラーニング
eラーニングは、オンライン上で従業員が自分のペースで学習できる方法です。時間や場所を選ばずに受講できるため、多忙な従業員や拠点が分散している企業でも効率的に研修を実施できます。
一方で、一方通行の学習になりやすく、当事者意識の醸成や行動変容につなげにくいという側面があります。ハラスメント研修では、自分の言動を振り返ったり、他者の視点に触れたりすることが意識改革につながるため、双方向のやり取りがあるライブ形式の研修との併用が効果的です。
eラーニングで基礎知識を習得したうえで、社内・社外研修でディスカッションやケーススタディに取り組むことで、知識の定着と実践的な学びの両方を実現できるでしょう。
ハラスメント研修の効果を高めるためのポイント
ハラスメント研修の効果を高めるためのポイントは以下4つです。
- 階層別に内容を変える
- 事例やディスカッションを盛り込む
- 継続的に研修を実施する
- 研修後にアンケートを実施する

階層別に内容を変える
ハラスメント研修の効果を高めるためには、階層別に内容を変えることが重要です。管理職と一般社員では、ハラスメントに対する立場や求められる役割が異なります。
- 管理職:部下への指導とハラスメントの境界線や、相談を受けた際の対応方法、職場環境を整える責任について
- 一般社員:ハラスメントの定義や被害を受けた際の相談先、自分自身が無意識のうちに加害者にならないための注意点
階層ごとに研修内容を最適化することで、それぞれの立場に応じた実践的な学びを提供でき、研修の効果を最大限に高めることができます。
関連記事:管理職研修の目的とは?効果を高めるポイントや対象者別の研修カリキュラムを紹介
事例やディスカッションを盛り込む
ハラスメント研修の効果を高めるためには、具体的な事例やディスカッションを盛り込むことが重要です。座学で知識を伝えるだけでは、従業員が自分事として捉えにくく、実際の行動変容につながりにくい傾向があります。
そこで、実際に起こりうるシチュエーションを題材にしたケーススタディを取り入れることで、参加者は「自分ならどうするか」を具体的に考えることができます。
また、グループディスカッションを通じて他の参加者の意見や視点に触れることで、自分では気づかなかった言動のリスクを認識するきっかけにもなります。こうした双方向型の研修を取り入れることで、知識の定着だけでなく、職場での実践的な行動につなげることができます。
継続的に研修を実施する
ハラスメント研修は一度実施すれば終わりというものではありません。法改正や社会情勢の変化に伴い、ハラスメントに対する認識や求められる対応も変わっていきます。
また、時間が経つと研修で学んだ内容が薄れてしまい、日常業務の中で意識されなくなることもあります。そのため、年に一度の定期研修に加え、新入社員研修や管理職昇格時の研修など、節目ごとに実施することが重要です。
継続的に研修を行うことで、従業員は最新の知識をアップデートしながら、ハラスメント防止の意識を維持できます。組織全体にハラスメント防止の文化を根付かせるためにも、研修は単発ではなく継続的な取り組みとして位置づけることが大切です。
研修後にアンケートを実施する
ハラスメント研修の効果を高めるためには、研修後にアンケートを実施することが重要です。アンケートを通じて、受講者が研修内容をどの程度理解できたか、実務に活かせそうな点は何かを把握することができます。
また、研修の進め方や講師の説明に対する率直な意見を収集することで、次回以降の研修内容や実施方法を改善するための貴重なデータが得られます。
さらに、アンケートで「職場で気になる言動がある」といった声が寄せられた場合には、潜在的な問題を早期に発見するきっかけにもなります。研修を実施して終わりにするのではなく、アンケート結果を分析し、継続的な改善につなげることで、研修の効果を最大限に引き出すことができます。
関連記事:やりっぱなしにしない!研修効果を見える化するための測定方法とは?
まとめ
ハラスメント対策は、パワハラやセクハラ、マタハラに加え、カスハラや就ハラに対しても順次義務化が進んでいます。企業が取り組むべき対策としては、方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速な対応、プライバシー保護と不利益取扱いの禁止が挙げられます。
しかし、これらの対策を実効性のあるものにするためには、研修を通じて全従業員の意識を高めることが不可欠です。研修は階層別に内容を変え、事例やディスカッションを取り入れ、継続的に実施することで効果が高まります。
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