主体性を育み、エンゲージメントを高める「ジョブ・クラフティング研修」

主体性を育み、エンゲージメントを高める「ジョブ・クラフティング研修」

目次

企業の人事・人材育成担当者の皆様、社員の主体的な行動や当事者意識の欠如、あるいは若手の離職率の増加といった課題に直面されていませんでしょうか。
変化の激しい現代において、社員一人ひとりが自律的にキャリアを築き、成果を出すことが企業成長の鍵となりますが、社員が「言われたことだけをこなす」状態から抜け出せないという悩みを抱える企業は少なくありません。こうした課題を解決するアプローチとして、近年注目を集めているのが「ジョブ・クラフティング」です。
本レポートは、2025年10月に、長谷川 岳雄氏(明星大学経営学部 客員教授/株式会社みらいへ 代表取締役)を講師に迎え開催された「ジョブ・クラフティング研修」デモセミナーの模様をお届けします。長谷川氏は、大手金融グループ企業の人事部門で採用・研修・制度設計を統括し、その後は大学教員および企業研修講師としてキャリア開発やリーダーシップを支援してきた、人事実務と理論に精通した専門家です。長谷川氏が解説するジョブ・クラフティングの核心と、具体的な実践方法をご紹介します。

パート1:長谷川岳雄講師によるジョブ・クラフティング研修の講義

1. なぜ今、ジョブ・クラフティングが求められているのか?

ジョブ・クラフティングは、2001年に提唱された概念ですが、2010年代半ばから学術界で急激に注目を浴びています。特にオランダで「ジョブ・クラフティングがエンゲージメントに効果がある」という実証研究が発表されて以来、アカデミックな世界だけでなく、ビジネス界でも注目を集めています。

この背景には、組織、個人、社会、学術の四つの側面からの変化の潮流があります。

組織サイド:従業員のエンゲージメントの低下や、若手社員の離職率の上昇といった問題。
個人サイド:働く個人が、働きがいやウェルビーイング(幸福)を追求する傾向の高まり。
社会サイド:働き方改革の推進や、コロナ禍以降の働き方の多様化・柔軟化。
学術サイド:働く個人のエンゲージメント、業績、幸福感等への効果の実証。

長谷川氏は、この変化の潮流の根底にあるキーワードとして、「意味づけ(センスメイキング)」を挙げました。これからの時代、「正解」が人を動かすのではなく、「意味(意味づけ)」が人を動かすのです。社員が仕事に意味を見出すことこそが、ジョブ・クラフティングという概念が注目される理由であると考えられます。

2. ジョブ・クラフティングとは何か?

ジョブ・クラフティングは、レズネスキーとダットン(2001年)によって提唱された概念で、「従業員が、自分自身にとって意味のあるやり方で、職務を再定義・再創造するプロセス」と学術的に定義されています。 研修の場ではこれを日常用語で分かりやすく、「目の前にある自分の仕事に『自分らしさ』をひと味加え、『クラフト(手作り)する』方法」と定義しています。すなわち、「与えられた仕事を、自分の手触り感のある仕事や、自分なりに意味のある仕事に変えていく手法」であると言えます。

この手法を実践することによって、以下のような効果が明らかになっています。

個人の態度:職務満足度の向上、離職率の低下、ワーク・エンゲージメントの向上
個人の行動:創造性(クリエイティビティ)、業績(パフォーマンス)の向上
個人の幸福感:ポジティブな感情の増進、主観的幸福感(ウェルビーイング)へのポジティブな影響

特に若手社員にとっては、ジョブ・クラフティングを実践することが、成長を促進し、エンゲージメントを高め、メンタルヘルスを改善することがわかっています。また、最近ではミドルシニア層向けのキャリアデザイン研修でも導入の要望が増加しています。

3. 実際どのようにジョブ・クラフティングを進めていくのか?

ジョブ・クラフティングの実践は、「自分らしさの言語化」と「3つのクラフティング手法」という四つの要素から成り立っています。長谷川氏の研修では、このプロセスを5つのステップに分けて進めていきます。

① 自分らしさの言語化(MPSモデル)

Meaning(大切なこと)・Pleasure(好きなこと)・Strength(得意なこと)の3要素を言語化します。

② 業務と自分らしさのマッチング

ステップ1-1 業務の棚卸し: 担当業務を10個程度リストアップする。
ステップ1-2 自分らしさの言語化: MPSの要素を付箋などで6つ程度に言語化する。
ステップ1-3 業務の可視化とマッチング: 業務を「活力が得られる/奪われる」と「投入時間が多い/少ない」の二軸四象限にプロットし、業務と自分らしさをマッチングさせ、グルーピングする。
ステップ1-4 対象の選定: 活力が得られる業務や投入時間が少ないが活力を得られる業務など(第二象限または第四象限)から、ジョブ・クラフティングを行う対象業務を一つ選定する。このマッチングと選定が、ジョブ・クラフティングの最初の肝となります。

③ 3つのクラフティングの実践

選定した対象業務に対して、以下の3つの手法を用いて「自分らしさ」を加えていきます。

ステップ2 認知的クラフティング:仕事の捉え方を変える
これはカウンセリング心理学におけるリフレーミングに相当し、仕事に対する自分の見方や枠組み(フレーム)を変えることです。現実が世の中を作っているのではなく、我々の見方が世の中を作っているのです。 
具体例: 金融機関での「決算書分析の転記作業」を「ただの数字」と捉えるのではなく、「お客さんの経営の物語(ストーリー)」として捉え直す。または、会議資料の「シュレッダー作業」を「めんどくさい作業」ではなく、「情報の宝庫」として捉える。
見方が変われば、意味が変わる。意味が変われば、行動が変わります。目の前の仕事の見方を変えるリフレーミングは、ジョブ・クラフティングの肝となるプロセスです。
実践ポイント: 「自分にとっての意味」「誰のためになっているのか」「会社の理念」の観点から捉え方を変える。

ステップ3 関係性クラフティング:人との関わりをちょっとだけ変える
その仕事に関わる人や、関わり方を少しだけ変えてみます。例えば、関わる人を変えてみる、広げてみる。関わる人を変えられなければ、関わり方をちょっとだけ変えてみるなどの実践です。大きな行動変容ではなく、こちらから声をかけてみるとか、仕事以外の雑談をして相手のことを知ろうとするなどの小さな行動の積み重ねが大切です。
実践ポイント: 「誰と関わるか」「どう関わるか」「何のために関わるか」を変えてみる。

ステップ4 タスク・クラフティング:業務内容や進め方をちょっとだけ変える
業務の内容や進め方を工夫し、少しだけ変えてみます。
知識・スキル向上のための自己研鑽もこのクラフティングに含まれます。
実践ポイント: 「手順/やる順番の工夫」「手法/やり方の工夫」「自己の知識・スキル向上」を図る。

ステップ5 実践と定着
研修で立案したジョブ・クラフティングを、実際に実務で試します。
実践ポイント: 小さいことから始める、やりやすいところから始める。実践を通して、小さな進捗や成長を自分で認めてあげることや、やらないことを捨てることも効果的です。

※本レポートでは5ステップに再構成しています。

4. 研修プログラムの全体像

ジョブ・クラフティング研修は通常1日間のバージョンで実施されることが多いです。
長谷川氏の研修では、最後に「ストーリーとしてのジョブ・クラフティング」というワークを通じて、参加者に「自分は何者か(リフレクション)」「どこに向かおうとしているのか(ビジョンメイキング)」「今何をするのか(アクション)」を問いかけ、仕事への意味づけを完了させます。
この研修は、若手社員向け(主体性・エンゲージメント向上)だけでなく、ミドルシニア社員向け(経験の再定義・ウェルビーイング)としても提供されており、対象層に応じた理論紹介(ミドルシニア向けは社会情動的選択性理論・選択最適化補償理論)で導入の意義を伝えます。

パート2:ディスカッション(研修効果・事例紹介)

講師:長谷川 岳雄氏
ファシリテーター:株式会社かんき出版 HRソリューション事業部 山縣道夫

山縣―ジョブ・クラフティング研修を導入する企業は、どのような課題や悩みがきっかけで検討を始めるケースが多いですか?

長谷川氏―導入のきっかけとなる課題には、主に三つの傾向があります。
1.  若手社員の「一人前の壁」の突破と当事者意識: 最も多いのは、若手社員に「自分ごと化」「主体性」「当事者意識」を持ってもらい、一人前の社員として壁を突破してほしいという要望です。
2.  エンゲージメントの向上: 組織全体のエンゲージメント低下を背景に、これを高める手段としてジョブ・クラフティングが検討されます。
3.  若手の離職率の増加: 特に製造業の製造部門などで、若手社員の離職が増加している企業が、定着施策として当事者意識や主体性を育むジョブ・クラフティングに注目するケースが見られます。

山縣―ジョブ・クラフティングを学んだ部下に対して、上司はどのように関わっていくと良いでしょうか?

長谷川氏―上司の働きかけは、研修の効果を定着させる上で非常に重要です。
日本のジョブ・クラフティング研究の第一人者の研究においても、上司の働きかけがジョブ・クラフティングに効果があることが示されています。上司の理解や働きかけがないと、研修効果は発揮されません。
上司が関わる上でのポイントは以下の三点です。

  1. 心理的安全性のある環境づくり: 部下が新しいことや新しいやり方に挑戦できるように、「やってみてもいいよ」という許可や環境を与えることが重要です。これは心理的安全性を高めることにもつながります。
  2. 小さな進捗や成長の承認: 部下ができるようになったことや仕事の進捗を上司が具体的に認めてあげることが大切です。例えば、「この間言っていたことを、少しはうまくできるようになったね」といった声かけです。
  3. 1on1等での問いかけ: 1対1の面談などの場で、ジョブ・クラフティングを促進する問いかけ(コーチング)を行います。具体的には、シミュレーション(「どんなやり方が考えられるか?」)とリフレクション(「どういうところが難しかったか?」「何を意識してやったのか?」)を促すことです。

山縣―研修で学んだ考え方を、日常の仕事の中でどう定着させていくと良いでしょうか?

長谷川氏―本人による自己管理と習慣化が鍵となります。
上司の働きかけがない場合でも、自分で定着を図るためのポイントは以下の三点です。

  1.  シミュレーションとリフレクションの習慣化: 「次に何をやってみようか」とシミュレーションする癖と、「今日意識してやったことは何か」「結果はどうだったか」と振り返る(リフレクション)ことを習慣化することが重要です。
  2.  「意味づけ」の訓練: 認知的クラフティング(仕事の捉え方を変えること)はジョブ・クラフティングの肝です。仕事に対して「めんどくさい」といったネガティブな思考を癖にせず、「もしこの仕事に自分にとって意味があるとしたら何なのか」というように、やらされている仕事に意味を見出す訓練を続けることが大切です。
  3.  自己承認: 進捗や成長を上司が認めてくれない場合でも、「こんなことできるようになった」と、自分の小さな進捗や成長を自分で認めてあげることが定着には不可欠です。

まとめ:ジョブ・クラフティング研修で貴社の課題を解決へ

ジョブ・クラフティングが単なるモチベーション向上の施策ではなく、社員の主体性、エンゲージメント、ウェルビーイング、そして組織のパフォーマンス向上に直結する、実証されたキャリア開発の手法であることが明確になりました。

このアプローチの本質は「意味づけ(センスメイキング)」の訓練にあります。特に、仕事の捉え方を変える認知的クラフティングは、「見方が変われば、意味が変わる。意味が変われば、行動が変わるというのがこの手法の核心」であり、「ジョブ・クラフティングの肝」です。

特に、若手社員の自律的な成長やミドルシニア層の経験再定義といった、企業の人事担当者が抱える具体的な課題に対して、ジョブ・クラフティングは即効性のあるヒントと実践的な方法論を提供します。
長谷川岳雄氏による「ジョブ・クラフティング研修」は、現場の実務経験と最新の理論に基づき、社員が「自分らしさ」と「仕事の意味」を深く結びつけ、自律的に行動変容を起こすための確かなステップを支援いたします。

社員の主体的な行動や当事者意識、エンゲージメントの向上にご関心をお持ちの企業様は、ぜひ以下のプログラム詳細をご確認の上、お気軽にお問い合わせください。

参加者の声

  • 若手社員に対する上司の働きかけも同じくらい大切という点が印象に残った。
  • どのように実践につなげるかの部分も大切だと思った。
  • 若手社員の早期離職につながるアプローチだと感じた。

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