部下指導でうまく伝える3つのコツ~世代・文化のギャップを解消~

部下指導でうまく伝える3つのコツ~世代・文化のギャップを解消~

目次

2024年10月、小社刊『賢い人のとにかく伝わる説明100式』著者の深谷百合子氏によるアーカイブセミナーを開催しました。
本セミナーでは、「説明しても部下が納得しない」「適切に指導できない」といった管理職がもつコミュニケーション課題の解決策を解説しました。以下にセミナー内容の一部をご紹介します。

パート1 深谷百合子氏による講義

1.「話し方」「書き方」「型」に頼らず「素材」を揃える

「説明が伝わらない」「相手に理解してもらえない」と感じたことはありませんか?
その原因は、多くの場合、以下の点に注力しすぎていることにあります。

「話し方」
「表現方法」
「プレゼン資料の作り方」
「○○法などの型」

しかし、これらを表面的に身に付けただけでは相手に伝わりません。
重要なのは「説明の素材」を適切に準備し、それをどのように組み立てるかです。

説明力というのは3つの要素に分解できると考えられます。
誰に「相手」 × 何を「素材」 × どのように「手段」

誰に・何を については、どれだけ情報を収集できるかという情報収集力、一方、集めた情報をどのように組み立て、どの順番が伝わるかというところは、情報整理力にかかっています。

2.うまく伝える3つのコツ

うまく伝えるコツとしては、以下の3つがあります。
誰に   → ・相手基準で考える
何を   → ・イメージを共有する
どのように→ ・3点セットで伝える

コツ1. 相手基準で考える

説明のスタートは相手を理解することからです。
部下にとってやる気の出る言葉や仕事で大切にしていることなど、自分とは違う「ものさし」があることを理解しましょう。部下指導する方は、自分のほうから部下の「ものさし」に合う言葉に変えて伝えていくことが大切になります。

コツ2. イメージを共有する

相手にとってイメージしやすい言葉で伝えることも1つのコツです。
「伝わる」とは「相手」に動いてもらうことですから、「伝えたいイメージ」と「相手が受け取ったイメージ」との間に大きな「ズレ」がないよう、イメージを共有することが大事です。
イメージが共有できないと、感情が動かず、その先の行動を促すことに結びつかないのです。
そのために、「事実」(素材)を集めるには具体例やエピソードなどでイメージの解像度を上げていきましょう。

コツ3.  3点セットで伝える

「事実(出来事)→解釈(感情)→行動」の3点セットで伝えることで、相手に納得感を与え、行動を促せます。この中の一つでも欠けると伝わりにくくなるため、具体的な指示を明確に伝えることが重要です。

3.情報を整理する

集めた情報(材料)を整理することも大事です。
 ・事実・・・具体例・エピソード(たとえば)
 ・解釈・・・自分の意見・理由(なぜなら)
 ・行動・・・してほしい行動(だから)

ベテラン(上司側)が無意識に行っていることを言葉にするのは難しい場合があります。
そのため、部下に伝える際には、前述した「事実・解釈・行動」の3点セットで情報を整理することがポイントです。新人とベテランの「見えているもの」「考えたこと」「行動」をお互い書き出し、共有し、そのギャップを埋めることで、効率的な指導が可能になります。

4.「情報収集力」を養う

当セミナーで一番伝えたいのは「情報収集力」がいかに大事であるか、ということです。
情報収集力を磨くためには、
・伝える相手はどんな人?
・調べる(話を聞く、現地に行く…)
・数字でつかむ
・五感を使う
・5W1Hにあてはめて集める
といったように、情報をいかに集めてくるかが説明をする上で何より重要です。

パート2 ディスカッション(研修効果・事例紹介)

講師:深谷百合子氏
ファシリテーター:株式会社かんき出版 山縣道夫

5.実際にどのようなお悩みを受けて本研修を実施するのか?

山縣―実際に企業からどのような対象層の課題を受けていますか?

深谷氏―主に以下のようなケースが挙げられます。
①中間管理者層が説明できないことで部下との間に不信感が生まれるケース
②若者世代が意図を汲み取れず、コミュニケーションが取れないケース
③ハラスメントを恐れるあまり、注意や指導ができず、コミュニケーションが希薄になるケース

山縣―①について詳しく教えてください。

深谷氏―例えば、「明るい職場にしよう」という方針が出ても、具体的な行動が共有されず、成果につながらないという事例があります。また、相手に誤解される伝え方をしてしまい、トラブルになることも。
また、「区切りの良いところで帰っていいよ」と言ったつもりが、部下はいつ帰って良いかわからず困る、といったケースです。

山縣―「よかれと思って」の行動が裏目に出ることも多いのですね。

深谷氏―あえて口出ししないことで「何をしていいのかわからない」「放置された」と感じ、不安になるケースもあります。特に仕事ができる人ほど、「なぜ相手ができないのか」がわからず、教え方に苦労するという相談もよく聞きます。全体的に、「言わなくてもわかるだろう」と思い込む傾向があり、それが部下の育成を妨げてしまいます。

山縣―ハラスメントを恐れてコミュニケーションが希薄になるケースも多いのですか?

深谷氏―特に「叱り方が難しい」と悩む方が多いです。例えば、「あなたは」という主語を使うとハラスメントと受け取られがちです。そのため、焦点を行動に当て、「あなたのこの行動は改善が必要」と伝えるように主語を変える工夫を指導しています。

6.研修実施後の受講者の変化をいくつか紹介

山縣―受講者がもつお悩みと研修後に解決した事例を教えてください。

深谷氏―テクニックやノウハウを期待して来た方が、意外なところで解決のヒントを得るケースが多いです。
例えば、「相手が何を知りたいのか」にもっと関心を持つようになると、深い話を聞けるようになったと感じる方が多いです。これまで「自分が発信すること」が重要だと思っていた方々が、「相手を理解すること」に気持ちを向けるようになり、大きな変化を実感しています。

山縣―相手基準で考えるスキルを習得されたのですね。

深谷氏―「説明がうまくなるには、まず話を聞くことが大切」という結論に至った方も多いです。
また、1on1で相手の悩みを聞いたとき、「私も同じです」とすぐ自分の話に切り替えていたのが、相手の話をしっかり聞けるようになった、という声もあります。主語を「私」から「あなた」に変えるよう意識するだけで、効果を感じる方が多いですね。

7.導入事例紹介

山縣―他に事例があれば教えてください。

深谷氏―コンビニエンスストアのフランチャイズ経営者からの依頼で、多様なスタッフに向けた研修を行いました。高校生、シニア、外国人など様々な層がいる職場で、共通言語を持つために「言葉の定義」を決め、具体的な行動に落とし込むよう指導しました。その結果、チームがうまく回るようになったという声をいただいています。自分の言葉が相手に伝わっていないかもしれないと気づけたことが変化のきっかけでした、立ち止まって考える習慣ができたという声も多いです。

山縣―他に印象的な変化や声はありますか?

深谷氏―テクニックではなく、本質にアプローチする大切さを知ったことが一番良かったと言われたときは嬉しかったですね。「型にはまった方法」ではなく、大切な考え方を伝えられたのが成果だと思っています。

山縣本日は貴重なお話をありがとうございました。

8.受講者の声

・「伝える」で悩む管理職が気を付けるポイントが整理された。
 ・「主語を変える」という説明が印象に残った。
 ・事実・解釈・行動の3点セットで伝える方法を知り、自分の不足を認識できた。
・簡潔でわかりやすく、伝える本質を学べた。

以上、部下指導でうまく伝える際のヒントとなりましたら幸いです。

研修導入のご相談や、本セミナーの視聴を希望されるご担当者様は、以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
https://edu.kanki-pub.co.jp/contact

深谷百合子講師の研修プログラム「説明力向上研修
https://edu.kanki-pub.co.jp/training/175

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