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「今年度はギリギリ目標を達成できたが、来年度以降も安定して女性管理職比率の目標を達成し続けられるか、自信が持てない」そのような不安を抱える人事担当者の方は少なくありません。
女性管理職を増やすための取り組みを進めていても、「研修を実施したが候補者が育っていない」「登用できる人材が特定の社員に偏っている」という状況が続いているとすれば、それは施策が足りないのではなく、採用から育成・登用まで一貫したパイプラインが設計できていないことが根本的な原因かもしれません。
本記事では、女性管理職が増えない構造的な原因を整理したうえで、継続的に候補者を輩出するためのパイプライン設計という視点から、実務に落とし込める6つの施策を解説します。年間960件以上の研修実績を持つかんき出版の社員研修が、現場で機能する打ち手を体系的にお伝えします。
女性管理職の現状
厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によると、係長相当職21.1%、課長相当職12.3%、部長相当職8.7%と、役職が上がるにつれて女性比率が急落する傾向が続いています。政府は「2030年までに指導的地位の女性割合を30%に」という目標を掲げていますが、現状との乖離は依然として大きいのが実情です。
一方、企業規模別に見ると、大企業ほど女性管理職がいる企業割合は高く、従業員5,000人以上の企業では、課長相当職の女性が1人以上いる企業の割合が96.8%に達しています。数値として登用が進んでいる企業でも、「女性の昇進意欲がない」「候補者が不足している」という課題は共通して残っており、数値が上がっても構造的な問題が解決していないケースが多い点には注意が必要です。
出典:令和6年度雇用均等基本調査|厚生労働省
女性管理職が増えない5つの原因
「候補者がいない」という声をよく耳にしますが、これは課題の本質ではありません。正確には、「候補者が育つ環境・仕組みがない」という構造的な問題として捉え直す必要があります。
以下の5つの要因は、採用→育成→推薦→登用→定着というパイプラインの各段階で生じる課題として整理できます。どのフェーズで詰まっているかを特定することが、効果的な打ち手を見つける第一歩となります。
【採用】入口段階での女性比率が確保できていない
採用時点で女性比率が低いと、その後どれだけ育成施策を講じても、管理職候補者数には構造的な限界が生じます。「総合職に女性が少ない」「幹部候補コースへの女性の配置が少ない」といった状態が続くと、パイプライン全体が細くなります。採用段階での母集団形成・選考基準・配属方針を見直さない限り、下流の施策の効果は限定的です。
【育成】管理職志向が時間とともに低下していく
国立女性教育会館の調査によると、入社時点で管理職を希望する女性は約60%いるにもかかわらず、入社1〜2年目での志向低下率は男性の3倍にのぼり、5年目には37.6%まで減少しています。これは「もともと意欲が低い」のではなく、職場環境や先輩の姿を見て「自分には無理だ」と学習していくプロセスがあることを示しています。意欲が失われる前に、意図的な育成機会と上司からのキャリア対話を提供することが重要です。
出典:令和元年度男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査(第五回調査)報 告 書|独立行政法人 国立女性教育会館
【推薦】育成・登用プロセスの不透明性とバイアス
昇進基準が明文化されておらず、推薦が現場の上長の裁量に依存している場合、無意識のバイアスが影響しやすくなります。「管理職は男性向き」「重責に耐えられない」といった思い込みが、女性に重要業務を任せない・昇進打診を控えるという"過度な配慮"として表れ、候補者の偏りを生み出します。「なぜ昇進できなかったのか」がフィードバックされないまま放置されると、女性社員の意欲はさらに低下します。
【登用】ライフイベントが昇進タイミングと衝突する
育休・時短勤務などのライフイベントが昇進タイミングとぶつかり、評価対象から外れる仕組みが残っている場合、実力がある女性社員でも候補者リストから外れる「マミートラック」が常態化するリスクがあります。育休を「キャリアの中断」として扱う人事制度のままでは、意欲ある女性社員が管理職を目指す意思を徐々に失っていきます。
【定着】管理職そのものの魅力・持続可能性の低さ
「長時間労働が前提」「責任ばかり重くなる」というイメージが管理職に定着している場合、ライフステージへの配慮が必要な女性に限らず、管理職を目指す社員全体が減少します。せっかく登用できても、管理職の働き方が変わっていなければ新任管理職が早期離脱するリスクも高まります。定着率を維持するには、登用後のフォローと管理職の業務環境の整備が不可欠です。
女性管理職を増やすためには?
女性管理職を「その都度登用する」施策から脱却し、採用から定着までを一本のパイプラインとして設計することが大前提となります。
パイプライン設計が機能している状態とは、「来年度以降も女性管理職比率の目標を安定的に達成できるか」という問いに自信を持って答えられる状態です。具体的には、どの階層から何人の候補者を育成・登用できる見込みがあるかまで把握・管理できている状態といえます。次のセクションでは、そのパイプラインを構築するための6つの施策を解説します。
女性管理職を継続的に増やす6つの施策

施策①:階層別データで自社のボトルネックを可視化する
まず取り組むべきは、データによる現状把握です。女性比率を「採用→一般社員→係長→課長→部長→役員」の各階層ごとに分解し、どの段階で比率が落ちているかを特定します。
パイプライン上で追うべき主な指標には以下のようなものがあります。
- 採用比率:新卒・中途それぞれの女性採用比率
- 係長候補比率:一般社員のうち昇格要件を満たす女性の割合
- 昇進打診率・受諾率:管理職打診に占める女性の割合と、実際に受諾した割合
- 育休後の配置状況:育休復帰後に重要業務・昇格対象ポストに配置されているか
- 昇進辞退率:昇格打診を辞退した女性の割合とその理由
これらのデータを感覚ではなく数値で把握することで、「育成が弱い」のか「推薦に偏りがある」のか「入口の採用比率が低い」のかを特定できます。採用時点での女性比率が確保できていなければ、いくら育成施策を講じても候補者数に限界がくるため、入口から出口までの一貫したデータ把握が重要です。
施策②:候補者を早期特定し、育成機会を意図的に提供する
ボトルネックが可視化できたら、次はハイポテンシャル人材の早期特定と、育成機会の意図的な付与です。
候補者の見つけ方としては、「業績評価が一定水準以上」「周囲への影響力・主体性が見られる」といった基準を人事と現場が共有しておくことが有効です。特定した候補者には、プロジェクトのリーダーアサイン・他部署との越境学習・社外の女性リーダーとの交流機会など、通常業務では得られない経験を意図的に積ませることが育成効果を高めます。
マイナビの調査では、管理職意向のなかった女性が管理職を目指すきっかけとして、上司が「キャリアプランを一緒に考える」サポートが特に有効であることが示されています。人事は候補者リストを管理・定期的にモニタリングし(四半期に一度の見直しが目安)、「気づいたら候補者がいない」という状態を防ぐ体制を整えましょう。
出典:女性管理職を増やすための職場環境と上司のサポート ~2030年の女性管理職比率30%達成に向けて~|マイナビキャリアリサーチLab
施策③:単発でなく継続型の女性リーダー育成プログラムを設計する
一度きりの研修では、意識や行動の変容は定着しません。「マインド・スキル・環境」の3軸を組み合わせた継続型プログラムを設計することが、育成効果の持続につながります。
- マインド:自己効力感の醸成、アンコンシャスバイアスへの気づき、リーダーとしての自己像の形成
- スキル:リーダーシップ、マネジメント、戦略思考、フィードバック・コミュニケーション
- 環境:上司・メンターとの継続的な関与、同期・同世代の女性リーダーとのコミュニティ形成
管理職への昇進意欲を妨げる要因は、本人の自己評価の低さだけではありません。重要業務の経験機会が限られていること、身近にロールモデルが少ないこと、上司からの期待やフィードバックが十分にないことなど、職場環境が大きく関わっています。こうした背景を踏まえると、マインドセット支援と同時に、環境・上司との関係性へのアプローチも欠かせない要素です。
さらに重要なのが、研修後の上長によるフォロー面談です。研修効果の定着には、学びを職場で実践する機会と、上司・職場からの継続的な支援が不可欠であることが広く指摘されています。感想を確認するだけでなく、「学びをどの業務で実践するか」「次にどの経験を積ませるか」「昇格に向けて不足している経験は何か」をすり合わせる場として設計することで、研修内容が実務に接続されます。
施策④:上司・管理職へのアンコンシャスバイアス研修を実施する
女性社員側の育成を進めると同時に、上司・管理職側の意識変革にも並行して取り組む必要があります。どれだけ女性社員が成長しても、推薦・登用の意思決定を行う上司にバイアスが残っていては、候補者が正当に評価されません。
アンコンシャスバイアス研修では、自分の判断に潜む偏見を可視化し、女性部下への「重要業務から外す」「昇進打診を控える」といった行動が、意図せず機会を奪っていることを認識させます。研修後には、女性部下と定期的にキャリア対話ができる管理職を育てることが、組織全体の候補者育成力の底上げに直結します。
かんき出版の社員研修では、アンコンシャスバイアス研修を通じて、管理職自身が自分の判断傾向を客観視し、公正な評価・育成行動につなげるプログラムをご提供しています。
施策⑤:評価・登用プロセスを透明化し、属人的運用を排除する
公正な登用を実現するには、評価基準の明文化と制度設計の見直しが欠かせません。
まず、昇進に必要な要件・経験・評価基準を明文化し、誰もが納得できる形で評価が行われるよう透明性を確保します。あわせて、育休・時短勤務期間を「キャリアの中断」として不利に扱わない評価設計を導入し、ライフイベントが昇進の障壁にならない仕組みにすることが重要です。
施策の効果測定のためには、以下のようなKPIを設定してPDCAを回すことが有効です。
- 女性管理職比率(係長・課長・部長別)
- 管理職昇格者に占める女性割合
- 管理職打診を受けた女性の受諾率
- 育休復帰後1年以内に重要ポストへ配置された女性の割合
- アンコンシャスバイアス研修受講後の管理職の行動変容(360度評価等で測定)
数値をモニタリングし続けることで、どの施策が機能しているかを検証し、精度を高めていくことができます。
施策⑥:管理職の働き方そのものを変え、魅力を高める
管理職に就くことへのネガティブなイメージを払拭しない限り、登用の受諾率は上がりません。管理職ポストにも多様な働き方を認める環境整備が前提条件となります。
テレワーク・フレックス・時短勤務などを管理職にも適用することで、ライフステージに変化のある女性が管理職を諦めなくて済む状態を実現できます。また、管理職の業務負担の可視化・適正化を並行して進め、「管理職になると損をする」というイメージを組織として変えていく必要があります。
あわせて、男性育休取得や家事・育児参画の推進にも取り組むことが重要です。家庭責任が女性側に集中しやすい構造が変わらない限り、女性が管理職を目指しやすくなる環境は整いません。女性本人への支援と同時に、家庭責任を分担しやすい職場風土をつくることが、構造的な課題への本質的な対処となります。
さらに、社内の女性管理職をロールモデルとして可視化し、座談会・メンター制度・社外の女性リーダーとの対話機会を通じて「自分にもできる」という具体的なイメージを持たせることが、意欲醸成に効果的です。
女性管理職の増加を人的資本経営・DEIと接続する
女性管理職比率の向上は、単なる数値目標の達成にとどまらず、ESG投資評価・企業の持続的成長・人材競争力強化とも関わりの深いテーマとして、経営層への提言に活用できます。
ボストンコンサルティンググループの調査では、多様な人材が意思決定に関与することでイノベーションによる収益が増加するという結果が示されています。
有価証券報告書の人的資本開示においても、女性管理職比率の数値だけでなく、採用〜育成〜登用のパイプライン設計・目標・進捗を一貫して説明できるかどうかが、投資家・取締役会への説明責任を果たすうえで問われるようになっています。
出典:How Diverse Leadership Teams Boost Innovation|BCG
まとめ
女性管理職を「増やす」だけでなく「増やし続ける」には、点施策から脱却し、採用〜育成〜登用を一連のパイプラインとして設計することが不可欠です。
「女性が管理職になりたがらない」という声は、個人の意欲の問題ではなく、職場環境・制度・上司の行動・無意識のバイアスが複合的に絡み合った構造的な課題です。上司側のバイアス研修・評価制度の透明化・継続型育成プログラム・管理職の働き方改革をセットで進め、女性社員が「管理職になりたい」と思えるキャリア環境をつくることが先決といえるでしょう。
また、女性管理職比率の向上を人的資本経営・DEI推進と接続し、経営戦略として語れる形で社内外に発信できる体制を整えることが、大企業の人事担当者に今まさに求められています。
かんき出版の社員研修では、アンコンシャスバイアス研修をはじめ、企業ごとの課題・組織フェーズに合わせたカスタマイズが可能なプログラムをご用意しています。年間960件以上の研修実績をもとに、パイプライン設計の段階から伴走支援を行っています。女性管理職の育成・登用体制の構築をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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